人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

UFOとナスカの地上絵

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新聞購読されている方々ならご存知と思うが、これまで知られていなかったナスカ台地の地上絵が発見された。画像がそれで、CGで再現したものが上、地上絵部分を白く塗ったものが下になる。年代は紀元前四百年~二百年と見られ、右の人物は頭部から放射状の紋様が描かれたことから貴人と推定されるが、首と胴体が離れているのは斬首が行われたのを表すとも考えられるという。

ここで唐突に昨日記事の続きになるが、フロイトの弟子ユングは心理学や精神分析学からさらに進んで人類規模の種族的記憶の研究にたどりついた。集合無意識やグレート・マザー等の術語を知る人も多いだろう。人類史の中で神話的な原型が形成され、それが一種の普遍性を持って、個々または集団の人間を支配している。
ユングの提唱はあまりにオカルト的として80年代まで注目されなかった。だがフロイトの階級的・文化的・時代的限界を乗り越える方法なのは確かで、精神医学以外の分野への影響力は大きい。

そのユング晩年の著作に、「空飛ぶ円盤」という研究がある(原著58年・翻訳76年刊)。UFOの目撃がアメリカのジャーナリズムで話題になったのは47年で、70年代末までの30年間はある意味UFOの時代であり、SFの時代だった。80年代以降はUFOもSFも急激に話題性を失う。
ユングの著書はUFOの実在の研究ではなく、中世の民衆絵画や伝承にも多数の例があるUFO出現事件や現代の目撃例から「UFO目撃」自体の本質を明らかにしようというのが目的になる。

ユングは簡単に結論を出していないし、UFOの実在が論点ではないから断定はしないが、読者が感じるユングの結論は「UFOとは人の心が呼び出したもの」で、神秘体験の一種であり、心の状態を様々に現す-不安、希望、救済、超越。
この著作の魅力は数々の作者不詳の中世民衆絵画によるところも多く、どの絵画(版画)も飛行機はおろか気球すらない時代に空中飛行する巨大物体を、町中の市民が目撃した、という衝撃を伝えてあまりある。集団的な神秘体験など滅多に起こり得ることではない。

ミステリー・サークル、ナスカの地上絵などは、上空から俯瞰して初めて紋様が判別するのだから、UFO同様の神秘体験が背景にあるもの、と考えられる。新発見の地上絵は壁の染みから浮かび上がる幻覚を思わせて、幻覚経験者には薄気味悪くてならない。