人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補1e)バド・パウエル(p)

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Bud Powell(1924-1966,piano)。
バドの精神疾患は30代半ばにして慢性状態に近かったらしい。本格的な発症と入院が23歳だから治療が遅いとは言えない。だがジャズマンという不規則な生活の職業の上に深刻な薬物中毒もあった。噂になるような奇行も目立った。ある時などはその晩のギャラを全額はたいて近所中の店の消しゴムを買い占めたという。だがこの「狂気の天才ピアニスト」は金のなる木だったので、芸能プロは女性マネージャーをバドと結婚させ私生活まで管理する。

渡欧直前のブルーノート第5作、
The Scene Changes(画像1)58.12.29
-は日本では'Cleopatra's Dream'でひときわ人気の高いアルバム。全曲オリジナルとバド本人も気合いをいれただろう。だが直後にバドが渡欧したからかアメリカ本国ではほとんど話題にならなかったらしい。まとまりのいい端正な作品だが、バドならではの個性はオリジナルばかりのせいでかえって抑えがちになったとも言える。
ちなみにジャケットの男の子はバドと女子マネの子息とのこと。子供まで作ったのか。

フランスに移住してからがバドの楽歴を締めくくる甘美な時代になる。
Blue Note Cafe,Paris 1961(画像2)61.4
-はバド没後の発掘録音でベースはピエール・ミシュロ、ドラムスは先に移住していたケニー・クラーク(元MJQ)で、ライヴではオリジナルはやらずスタンダードとビ・バップ曲で勝負するのは正解だろう。このライヴ盤は時期もメンバーも選曲も共通するスタジオ録音の、
A Portrait Of Thelonious(画像3)61.12.19
-と姉妹作のようなアルバムで、後者は大手コロンビアからキャノンボール・アダレイのプロデュースでリリースされた。音楽的には何もしていないと思うが、キャノンボール監修の名目が必要だったのだろう。

この2作、ケニー・クラークがまるで別人なのが面白い。同じ曲でもスタジオとライヴだとこうも変わるか。ライヴはドラムスがうるさくピアノは指がもつれる。それがいい感じになった。録音はなんと後にストーンズビートルズ、ジミ・ヘンドッリクス、ジョン・レノンの極悪マネージャーになるアラン・ダグラスなのだった。