人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

離婚のいきさつ(1)

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別れた妻が娘たちを連れて家出したのはぼくには突然のことだったが、妻はずっと前から離婚の計画をたてて実行の機会を待っていたのが徐々にわかった。
ぼくは離婚の四年前には育児と家事に専念するために自営業を辞めていた。ふたりの娘たちは小児性の気管支炎を交互にこじらせ、およそ幼児の経験する病気ならもれなく感染してきたと思う。頭シラミなどたまらなかった。これは一家全員がかかった。

公立保育園には通常保護者が共働きなのが入所条件だが、娘たちがそろって通園できる日など月の半分がいいところだった。長女と次女は交互、または同時に病気がこじれたり体調を崩して通園を休ませねばならなかった。
病児保育ステーションという手もあったが、片道小一時間はかかる上に気管支炎は気管支喘息に進むおそれがあるからほぼ毎日小児科医院に吸入に通わねばならず、通院だけで半日かかるのでは結局親も仕事を休まねばならない。小児科はいつも二時間待ちは覚悟だった。待合室で読んであげた絵本が娘たちへの国語教育になった。

吸入だけならまだいいが点滴となると大変だった。これはたっぷり二時間はかかる。待ち時間と併せると四時間。二時間ずっと処置室で添い寝か抱っこしてやらねばならない。さすがに途中で五分くらいは看護婦さんに頼んでトイレのついでに一服した。点滴には鎮静剤も入っているらしく、しばらくすると眠ってしまうが、薬液は体温より低温だから眠ると急に体が冷たくなる。悲しく心許ない気持になる。
どちらかの娘を保育園に行かせている時はまだしも、ふたり同時の時など苦労は倍では済まなかった。長女は成長したなりに吸入だけで済むが、次女は点滴となると二時間は長い-もっとも姉は姉なりに妹を気づかっていたが。

点滴中に眠ると尿の量が半端ではない。紙おむつが吸収しきれないほどで、点滴の分だけ水分が出てくるのだ。長女の時はそんなこと知らなかったから、替えのおむつを用意し忘れて慌てて近所に買いに走った。一般的に男は女性より用意がうといのだ。
保育園帰りに小児科に吸入に行くと、突然点滴になることもよくあった。妻の仕事帰りが早く合流できるとほっとした。
離婚後、別れた妻はぼくに「あなたは最低の父親でした」と言った。妻がそう言うなら、娘たちもそう思って育っているだろう。それも仕方のないことだ。