ぼくとKが唯一意識していたのはポール・チェンバース盤(画像2)の『イエスタデイズ』(参考ではない。あちらではテーマはチェンバースがアルコ=弓弾き奏法で演奏しておりギター、ピアノ、ベース、ドラムスという渋い編成で演っている)で、テンポとキーではこれを踏襲した。
アルトサックスとベースのデュオならテーマはアルトの役目(バンドでだってそうだが)だろう。それにKは、アルコが上達しなかった。何しろ誰から習ってもいないから、アルコを買ってしばらくは、楽器店で訊くまで弓に松脂を塗るのを知らなかったくらいだ。
ベースとドラムスというのは天才の楽器で、天分のある人はまだ10代で一流の演奏家になってしまう。22歳くらいで一家をなしてしまう。ピアノも若くして天才奏者になる人が多いが、これは児童の頃から入門できてメソッドも確立しており(チェルニーだっけ?)、独奏演奏(練習)可能な楽器だからでもあるだろう。ベースやドラムスは第二次性徴期を過ぎて大人の体型にならないと本格的な練習は出来ない(ヴァイオリンは児童用サイズのものがあるがコントラバスでは聞いたことがない。チェロまでなら児童でも何とかいけるだろう)。なぜ、たかだか二~三年の楽器歴で、できるプレイヤーはできてしまうのか?
それはやはり、センスと音感、リズム感によるのだろう。ジャズの場合は特に固有のリズム感が獲得できるかにあるから、演奏上のテクニックではシンプルでも的を射た演奏ができれば基本は完成する。ジャズ・ドラマーではないが、うちのバンドの守屋くんなどは基本はもちろん、さまざまなヴァリエーションを身につけていたから、まるでキース・ムーンがジャズを演っているようだった。当然、キース・ムーンは守屋くんが目指しているフィリー・ジョー・ジョーンズやエルヴィン・ジョーンズから学んでロックに応用したのだろう。
ブリティッシュ・ロックに与えた影響はチェンバースやフィリー・ジョー在籍のマイルス・デイヴィス・クインテット、エルヴィン・ジョーンズ在籍のジョン・コルトレーン・カルテットとチャーリー・ヘイデン在籍のオーネット・コールマン・カルテットが三大バンドと言ってよい。
だがチェンバースとチャーリー・ヘイデンでは、ヘイデンは二歳年下だけなのにまるで違っている。それはリー・コニッツとのデュオ作品(画像3)からでもわかる。