人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

#31.承前『イエスタデイズ』

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前回で筆者は、
リー・コニッツチャーリー・ヘイデンによるアルトサックスとベースのデュオ・ヴァージョンの『イエスタデイズ』(画像2)が、オーネット・コールマン・カルテットの(ヘイデンはそれのオリジナル・ベーシストだった)『ロンリー・ウーマン』(画像3)を意識した演奏なのは、アドリブの中に『ロンリー・ウーマン』のテーマ断片を挟んでいることでもわかる。それにあわせてベース・ラインもモードを意識したものになる。これは、ぼくとKがもっと稚拙で乱暴なやり方で試していたのと同じアイディアだった」
-と書いた。ぼくたちは確かにまだまだ未熟なプレイヤーではある。だけどやり方次第では、ぼくたちが尊敬する老練なジャズマンよりも意外性と情熱に富んだ演奏ができる可能性もあるかもしれない。それをどうやって実現するか?

また、前回ぼくはこう書いてもいる。すなわち、
「ただし、ホーンとベースのデュオではこれだけは完全にベースが正確でなければならないことがある。これはサックス奏者から救いの手が差しのべられない。それはピッチ、いわゆる音高で、フレットを持たないアコースティック・ベースの場合、一旦ピッチを外すとすぐには気づけず(ピアノなしだと)、気づいた頃には手遅れなのだ」
Kはピッチについては安定したベーシストとは言えなかった。だからぼくたちは懸命に練習した。そしてなんとか、自分たちなりにベストの演奏を、スタジオではできるようになった。
「おれたち結構できるじゃん」と、K。
「そうだね」とぼくも相槌をうった。ここまで来るのにKもぼくもどれだけ地道な努力をしてきただろう。二人とも楽器自体が初心者の時点からジャズに取り組んできたのだ。

次のクラブ出演では西島さんが参加してくれることになった。幸か不幸か花ちゃんがスランプで半数の曲は休みたいというので花ちゃん抜き・西島さん入りで一度スタジオ練習し、せっかくだからその一回で新曲もリハーサルした。
その頃にはクラブ出演の交渉やギャラ(一般にチャージ・バックと呼ぶ)の管理を含めてぼくがバンドの代表者になっていた。バンドの名義も必要なので、Kのやっていたロックバンドの名前にジャズをつけて佐伯和人withジャズ・インジェクションというスカした名義で活動していた。お店の前に掲示されたバンド名を見るたびに照れくさかったものだ。