人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出37

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・3月20日(土)晴れ
(前回から続く)
「…散歩は大して面白くなかった。もうこのメンバーのだいたいの性格はわかっているし(注1)鯉もいないし、鯉の餌に三枚残したパンを持ってきていたお照さんは鴨のつがいやカラスにパンをあげていた(注2)。戻り道はショートカット・コース。あいかわらず女の人たちは花や生垣で立ち止まったり、平均年齢も高いしのんびりしているので、先に行ってますね、と病院のOT棟(注3)前の喫煙所で待つ。みなさんが戻ってきてロビーに入り、あとひと口、ふた口なので合流しようとしたが、隣にお照さんが来て明らかに連れ煙草の構図になってしまい、仕方なくもう一本喫う(注4)」

「ところでさ、とお照さんはべらんめえ口調で、こないだ喫煙室で耳に入ったんだけど、あいつ保護室送りだぜ、って誰のことなの?うーん、言えません(注5)…そうかあ。散歩グループのみんなは、案外義理がたくロビーで待っていてくれた。ミネラル・ウォーターを飲みながら休んでいたらしい(注6)。第二病棟アルコール科に上がると昼食10分前。朝もそうだったが、各テーブルにおしぼりを配るのは日直の役目なのだがヘルパーさんがもう配ってくれていて、朝と同じく一応全テーブルを拭く」

「昼食は平穏。今日この後の日直の仕事は13時半にデイルームのテレビの下のプレイヤーでクラシックのCDをかけてラジオ体操と掃除の集合時間を知らせることだが、部屋で朝からの日記を書いていると音楽が鳴りだした。まだ13時半まで15分以上ある。誰かがCDをかけて、週末で人数も少ないからてんでに掃除を始めている。ラジオ体操は13時半に館内放送がかかるから、それで掃除は一時中断になる。効率悪いったらない」(次回に続く)

(注1)わかっていたなどとはとても言えない。末期癌宣告されて冷静にあいさつして退院していったYzさんは立派だった。
(注2)鯉の餌やりは金輪際すごい勢いで突進してきて面白い。鳥だって可愛げはあるが真剣さが足りない。
(注3)この病院は体育には力を入れており、OT(作業療法)棟には立派な体育館もあった。
(注4)つきあいの良い性格だから仕方ない。
(注5)そんな話自体知らなかった。だったらそう言えばいいのに。
(注6)アルコール科ではミネラル・ウォーターは格別に愛飲されていた。