人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出39

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・3月20日(土)晴れ
(前回から続く)
「最初は後ろ姿でStくんだとはわからなかった。髪をさっぱりと短くしていたからだ。29日に理髪師が来て院内散髪があるがそれまで待てず(院内散髪なら2200円で済むのだが)、町まで出かけて3800円かかったそうだ。お菓子とインスタントコーヒーはやめられなくて、という。こんなになんの楽しみもない環境ではそれももっともで、買い食いしない方が不思議なのだ。たぶん読書と日記で発散できているのだと思う。ガキの頃から遊びや飲み食いよりも、読書と作文さえできれば(その後音楽が加わったが)満足していられた。今は好きな音楽は聴けないが、読書と作文、しかも通常同時進行では無理な記録を思う存分綴ることができる。刑務所でも以前の入院でも読書と日記だけで自分を支えてきたのだ(注1)」

「注文したゴールデンバットを取りに行くところなんだ。注文?うん、Kくんはショートホープ喫ってるけどA屋には置いてないから注文していて、おれも持参してきたバットがそろそろ切れるから注文したんだ。Stくんはフッと笑って、あいつ(注2)もたまには役に立つんだ(笑)。彼はあらかじめ買い物は決めていたようで、店内に入るとまっすぐ小袋のスナック菓子とチロルチョコのストロベリーを買って済ませたので少し待ってもらい、次の月曜は祝日だから発売中のジャンプ最新号の『ハンター×ハンター』第300話を立ち読みし、レジで注文のバットを4カートン、おまけで100円ライター2個(バットはポピュラーな銘柄の半額だから、2カートンで1個のライターになる)を買う」

「ベンチでStくんが一般精神科専門の第一病棟の内訳を教えてくれる。OT棟のある南側の二階建別病棟が第一病棟で、一階は女性患者病棟、二階は男性患者病棟が建前だが、男性患者数が多いので実質的には一階は男女混合病棟になっているそうだ。そういえば午前中に会った、素敵な人がいるよ(笑)の彼女も第一病棟の一階だと言っていた。第三病棟なんかなんでもありだからまるで建て増し構造のような病棟構成なのだ」

(注1)リクエストがあれば獄中日記や入院日記(四次分)も順次公開する、というかこれは第三次入院日記に相当する。
(注2)StくんとKくんは表向き、それに実際上親近性もあったが、内心では軽蔑しあっているのが傍目にもわかった。