人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記138

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・4月3日(土)晴れ
(前回から続く)
「堀口さんが入院の餞別に貸してくれたのが『エリック・クラプトン自伝』で、これは判型も大きく大部で重いハードカヴァーだったので入院前に読んだ。入院してから堀口さんが貸してくれた真意がわかったのだが、クラプトンの自伝は一言で言えば飲酒に左右された人生で、三部に分ければ第一部はアルコール依存症になるまで、第二部はアルコール依存症の苦悩、第三部は充実した断酒生活、ということになる。クラプトンは音楽家生活引退記念に併せて自伝を公刊したが、ソニー・ロリンズ同様、引退宣言後はむしろアルバム制作やコンサート・ツアーは活発になっている」

「つまり欧米で言う引退はプロ引退という意味で、今後は職業音楽家ではなく趣味として続けるか、いつでも好きな時にやめられる、ということだ。クラプトン自伝は音楽活動よりもむしろいかに自分が音楽活動によってアルコール依存症に追い込まれたか、依存症下での音楽活動がいかに苦悩の連続だったか、断酒生活に踏みきってどれだけ心身の健康を取り戻し音楽活動も安定したか、自分にとってライフワークは音楽よりもむしろAAの集会に出席を怠らず断酒を続け、AAに貢献してアルコール依存症の被害を少しでも減らせるかだ、とまで書いている」

「音楽誌でもクラプトンが引退記念に所有ギターのオークションを開き、なにしろ『クロスロード』を弾いたのはこのギター、『レイラ』はこのギター、確かブラッキーまで売ってしまったはずだ。そして売り上げはみんな全米禁酒協会に寄付した、と。それがこの入院で学んでいる自助グループ活動であるAAだったわけだ(何の略称か不明)。入院前にクラプトンが自伝で力説しているAA、日本では独自に断酒会という自助グループのネットワークもあるから自助グループ一般としてもいいが、アルコール依存症を克服するには完全な断酒しかなく、断酒を継続するには自助グループへの参加が不可欠であること、アルコール依存症者にとってはそれは何にも優先してライフワーク足りうるというのを、入院前に読んだ時は理解できなかった」

「堀口さんは入院生活への励ましにミックとキースの鉛筆画を描いてパウチまでしてくださった。入院仕度で折れてしまったり紛失したら無念なので携帯カメラで撮っておいた。これなら原画は自宅に置いておき、無傷で見られる」(続く)