人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記154

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・4月6日(火)晴れ
(前回から続く)
「おたがい昼食に戻らなければならないので15分にも満たない打ち明け話だったが、渡辺さん(仮名)の話が要点を押えて要領を得ていたのは外来ミーティング同様で、話術が巧みというよりも彼女が自分自身の病歴について繰り返し自問自答してきた重みを感じさせるものだった。彼女は考えぬいてきたのだ。それは他人に話すためだけではなく、彼女自身が過去を振り返ることでこれからの自分を立て直そうとする意志の力から来るものだっただろう。それが渡辺さんを率直で健気な女性にさせていて、この人の話ならば耳を傾けなければ、と思わせた」

「おおまかな病歴としては最初は鬱病の診断で第一病棟に入院、大量服薬自殺未遂やリストカットを繰り返し次はアルコール依存症で第二病棟に再入院。退院後の通院生活でも抗酒剤などガンガン捨てて飲み続け、病院の待合室でもペットボトルに詰め替えた焼酎を飲んでた。近所のコンビニでは買うとその場で飲み始めるので売ってくれなくなり遠くまで買いに行った」

「一時期生保を受けていたが約一年で苦しくなり実家に戻ると、母や弟からは死ね、殺してやると責められる。再々入院して今は断酒を守っているけど信用してもらえない。現在の収入は三級の障害者年金だけで自活には足りない。家を出て生保の再申請することは考えていないの?年金受けていてもできるの?おれも生保だけど、年金額を相殺した差額分を受給できるよ。以前に生保で生活が苦しくなったのはお酒代だよね?今ならやっていけるんじゃないかな」

「うん、お酒にお金を使わないならできると思う。一人暮らしでも断酒できる?…家にいて、昔のことを責められているよりずっといいわ。寂しくなったり悩んだりした時に相談できる友だちはいる?いるけどみんなもう結婚して子供いる歳だから…。じゃあ友だちになろうか、今何も持ってきてないから連絡先渡せないけど、どのみちおれの退院は五月だし。私も携帯もお財布も置いてきちゃったから、今度教えるね。私なんか中学生の頃からシンナー吸ってたしロクなもんじゃなかったわ。おれたちだいたい同年代だよね。おれは45、きみは?41、今年で42になる。今つきあっている相手は?いないわ。おれはバツイチさ、こうして二人で立ち話してる姿、アル中や精神病には見えないよなあ(笑)。そうよねえ(笑)」(続く)