人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記180

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(人名はすべて仮名です)
・4月13日(火)晴れ
「食前前検温36.4度、脈拍66、体重(下着)57.9kg。一時は60kg台に乗ったのにまた減らしてしまった。昨晩は日記を早く切り上げ町山智浩『USAカニバケツ 超大国の三面記事的真実』(大田出版・04年)ようやく読み終える。ちょうど最終消灯時刻だった。寝つきも寝起きも良好だが、瞬時の中途覚醒に今ここはどこか、病院のベッドなんだとカーテンを見て思った。朝食は無口、だが機嫌の悪さや鬱からはもう脱している。軽鬱状態でニコニコ安定しているように、自分でもそれに務ている。ある程度は意識的な努力で維持できることなのだから」

「朝の会のあと朝刊をじっくり読んで、10時半から任意参加の外来ミーティングに出る。入院患者はいつも自分だけだが、今日はデイケアのプログラムとのことで杭瀬さんも来る。デイケアに通っているということは、杭瀬さんも再入院患者だったということか。他はだいたいいつもの顔ぶれで七人ほど。例によって自己紹介と近況から。渡辺愛さんは退院日から数えて断酒64日目、前回は57日目だったから二か月を越えたわけだ。テーマは彼女の提案で『不安』と決まる」

「ミーティングが終わると隣席の彼女からまた一服してく?と誘われる。渡辺さんもミーティングの曜日はデイケアなんだよね。うん…デイケアない日は断酒会に行ってる。歩き出すと廊下の向うから武内。武内さん久しぶり!と渡辺さん。喫煙所へ行くと工藤が婦長の見張りつきでベンチの横の自販機で買い物、工藤さん!婦長さん!三か月断酒できたらあいさつに顔出そうと思ってたよ。退院二か月の渡辺さんが閉鎖病棟・24時間要監視の第三病棟の武内や工藤と顔見知りなのだから、彼らの入院期間はよっぽど長いのだ」

「その分第三病棟から第一病棟に移った酒井さんや長田くんは、半慢性患者ながら落ち着いた容体とも想像される。大丈夫かなあ私、と渡辺さん。さっきのミーティングでの話を指しているのだ。鬱かな、でもまだ軽いから心配しないで。鬱かなあ。コップを持つと手が震えない?震える!今まではお酒で紛らわせていたけど、今は断酒しているから不安になるんだよ。素面の自分に慣れてないんだ、きっと。大丈夫だよ、目標はあるだろ?そこで先週と同じやり取りがあり、早い話が退院したらデートしようか、という話題になる」(続く)