人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(26)

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みなさんチラホラ注文を決め始めたみたいですぜ、とスティンキー。あっしらも食事の前の一杯くらい決めましょうや。レストランって名乗るなら景気づけの酒くらいあるでしょう?
それもいいが、私はまだ勤務中なんでね、とヘムル署長。早く勤務が明ければいいのだが、なにせこれだ、とヘムル署長は左腕を上げました。釣られてスティンキーの右腕も上がります。スティンキーはへつら笑いを浮かべました。
ねぇ署長、せっかくのめでたい会食ですぜ。この際野暮は止めにして、警官と泥棒である前にムーミン谷の住民どうしとして愉快にやりませんかね?
私だってそうしたいさ、きみにはムーミン谷警察署は財政面でも支えてもらっている恩義がある。きみの組織はムーミン谷の就職難を解消し、盗難活動によって谷の景気を活性化させる重要な経済機関でもある。だからきみの配下のコソ泥たちは自由に泳がせてあるではないか。
署長の話はあっしみたいな学のない野郎には何が何やらですわ。だってムーミン谷の法とはヘムル署長次第なんでしょう?だったら今夜の勤務終了も、この手錠を外すのも署長次第じゃないですか?
・苦悩するヘムル署長
ところがそう簡単にはいかんのだ。私の話が回りくどいのは申しわけない、なにしろヘムル族はヘムレン族と本家分家なのでね。
はあ、それは存じています…でもなぜ手錠を?
きみと手錠で仲良しこよしになるのは年がら年中のことだが、恩赦する時には部下に手錠の鍵を取りに行かせているだろ?
ええ、電子ロックのカードキーでしたな。
あれ以外の方法で無理矢理手錠を外すと、手錠から信号が発信されるのだ。
なんの信号です?
ムーミン谷中央広場地下のN2地雷起爆スイッチ。
署長、冗談は死ぬ時だけにしてくださいよ!
冗談ではないのだ。だからいくら私が法でも、この手錠を外さなければ勤務は終らないのだ。おたがい運が悪かったな。だが取り調べ中でも食事はできる。カツ丼にするかい?
もっと縁起のいいものにしますよ。逃げ足の速くなりそうなやつ。
じゃ私はダイエット中だからカロリー控え目で行く。ウェイター、頼む。ホッピー二杯、味噌汁とライスも二つ、私はカブラのズンドコ煮。きみは?
トンビのパッパラ揚げにします。…ところで手錠のカードキーはどこに?
聞いても無駄だよ、ムーミンママのハンドバッグの中さ。