人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記217

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(人名はすべて仮名です)
・5月11日(火)雨
「久しぶりの雨で肌寒い。もし来週月曜が退院日になるなら今週のプログラムで最後の一巡だ。もう内容には既視感があるから、実質的には二か月で一通りの学習を履修している。入院してきた時は初入院の人が大半だったが、今は再入院者のほうが多い―中里さん、三田さん、尾崎さんくらいではなかろうか。朝食、検温、朝の会どれもかったるく、本を読みたい、メールしたい等もあったが、渡辺愛さんが来ているかもしれない最後のチャンスなので内院ミーティングに出る。最後に顔をあわせて以来、滝口さんに借りた本を急いで読まなくてはならなかったり、臨時休止だったり、GW休みだったりして、結局連絡先の交換をしていないのだ」

「金子のおっさんまで出ていたが、こういうことは好きそうだからこれから毎週出るだろう。あとはだいたい常連だが、渡辺愛さんの姿はない。だからといって帰るわけにはいかず、今回のテーマは断酒と生活。アルコールゼロ度ビールが話題なので、どんなものかみんな興味を持っている。今日はたまたま婦長が立ち会いで、アルコールゼロ度ビールというのは好ましくない、と刺々しく言われる。理屈は言われなくてもわかる。代用品を常用するようになればその分不満が溜まり本物の酒類への欲求が強くなるだろう。そんなことはわれわれだってわかっているから、せめて会話のネタにして気分を晴らしているのだ」

「終了後、司会の女性精神保健福祉師に、まもなく退院なので今日が最後かもしれません、とあいさつしてくる。この病院への通院は?元々通っていた地元のクリニックに戻ります、デイケアでお世話になるかもしれませんが。名残惜しまれて集団療法室を出てくるとロビーに、ごく短期入院していた荻野さんが座っていた。お元気そうで何よりです、と言葉を交わす。ついでにメールチェックしておこうと隅の席に座ると、つい10日前に退院した梅崎さんと顔をあわせる。お嬢さんに車で送ってもらって、今は診察待ち。お孫さんの誕生予定日は来月21日で女の子とのこと。こちらも酒歴発表終えたこと、最短なら14日に退院できることなど話す。昼食の時間が迫ってきたので辞去して戻るが今日は遅いようだ。勝浦くんに梅崎さん来てるぞ、と声をかける。勝浦くんは急いで降りていき、何か訊かれた時のために残る」
(続く)