人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(42)

イメージ 1

・未登場人物
ミムラ夫人、ミムラやミイら35人の母親。スナフキンの実母。
三人の魔女トロール
その一、トゥーティッキ。気のいい世話好きな魔女トロール
その二、モラン。すべてを凍らせる冷たい灰色の魔女トロール
その三、フィリフヨンカ。きれい好きで神経質で気が小さい魔女トロール

ミムラ夫人は今ここにいませんが、かつてもいませんでした。35人の子どもたちは気づいたらそこにいたのです。ときおり顔ぶれはちがう時もありましたが、35人という定数と、長姉のミムラねえさんとちびのミイ(ポケットに入ります)だけは変りませんでした。この多人数の兄妹たちが存在するのに両親、少なくとも母親すら存在しないのは何故か、本人たちも周囲もまるでそれを詮索も頓着もしないのがムーミン谷の美徳と言えるでしょう。
正解にはミムラ夫人はいたのです。しかし彼女は世界からムーミン谷を隔絶させる結界を三人の魔女に張らせるとともに、その代償から自分自身を消滅させてしまいました。結界を張られたムーミン谷は記憶を持たない谷となり、魔女たちは魔女であることを忘れ、結界を発動させたミムラ夫人はこの谷の過去にも現在にも未来にも属さない存在になりました。
それはちょうど医療者が感染症の治療過程で患者から感染し、陽性反応が出て一定期間、医療の仕事ができなくなるようなものです。しかもムーミン谷の結界は半永久的なものでしたからミムラ夫人の非在も、三人の魔女の封印も半永久的なものでした。
医療の場合は性病と肝炎が危険ですが、要因としては針刺し事故のほかに、内科で梅毒やAIDS、泌尿器科で淋菌やクラミジア、婦人科でも同様の検査がされることがあります。ほとんどが検査センターに外注し検出感度の良い方法で検査されます。淋菌は培養や顕微鏡検査でも見つけることができ、若い男性が東南アジアあたりに遊びに行き、帰国したら膿のようなものが出るからと病院を受診したら淋菌が出た、という話もよくあります。
そうした理由で存在しないミムラ夫人はおろか、
・気のいい魔女トゥーティッキ、も、
・氷の魔女モラン、も、
・気弱な魔女フィリフヨンカ、も、
まったく無活躍な、普通のおばさんでしかないのが今あるムーミン谷でした。そこにスナフキンが現れたのです。もちろんスナフキンからも、母親の記憶は消えていました。