ジャズの名盤と言われるものも100枚200枚ではきかないが、内容の良さに加えて歴史的な重要性もあるものは繰り返し聴くほどに発見があり、飽きがこない。音楽に革新性があるからだ。スポンティニアス・ミュージック・アンサンブル『カリョービン』などもそれに当るだろう。簡単にデータを上げると、
The Spontaneaous Music Ensenble:Karyobin(Pt.1-6,Rec.18/2/68)
Kenny Wheeler-Trumpet,Flugelhorn
Evan Parker-Soprano Saxophone
Derek Bailey-Electric Guitar
Dave Holland-Bass
John Stevens-Drums
と、メンバーだけでも恐れ入る。当時のイギリスの精鋭ジャズマンが勢揃いしている。リーダーはジョン・スティーヴンスで、音楽的にはデレク・ベイリーのギターとスティーヴンスのドラムスが全体の基調を決めている。まず一曲。
[Karyobin Pt.1]
http://m.youtube.com/watch?v=DMqq5YTC1Uk
このバンド独自の取り決めは、曲を用意しない、打ち合わせはしない、リハーサルもしない、リテイクもしない、という完全即興演奏を追求した。レニー・トリスターノくらいしか先例はない。スティーヴンスのドラムスは定速ビートを叩かず、さらにベイリーのギターはコードもリズムもフレーズも弾かない驚異的なスタイルを確立した。アルバム・タイトルはもちろん迦陵頻伽から採られている。ジャンルはフリー・ジャズなのだが、この時このメンバーでしかできない音楽を見事にやってのけている。アメリカやヨーロッパ諸国のフリー・ジャズとも違う渋さがある。落ち着いて、聴きやすさすらあるのだ。
[Karyobin Pt.5]
http://m.youtube.com/watch?v=ref3Iu0LYyg