人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(27)

 チャーリー・ブラウンからの唐突な問いに答えたつもりか、ウッドストックは一気呵成に、
・、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、!
 と鳴きました。困惑するチャーリー。このみすぼらしい雑種の小鳥がどうやらチャーリーに反感を持っているらしいことは少年にも判断できました。ウッドストックは普段ブラインドタッチでスヌーピーの著述の口述タイピングを勤めているくらいですから、毎回出版社から返送されてくるその内容はともかく、彼らが標準アメリカ英語を読み書きできる能力があるのは明らかです。発声がままならないのは仕方ない、犬や鳥ですから。ですが直接チャーリーに返答するのであれば、逃亡中にまで携行しているタイプライターで答えることができるはずです。要するにこのクソッタレな小鳥はスヌーピーを通してしか話さないと決めており、もちろんスヌーピーは自分たちに不利な提案はするわけはないのですから、ウッドストックにどんな意見を求めようがチャーリーと彼らの1対2の構図は崩れようがないことでした。
 ウッドストックは何て言ったんだい?と屈辱感に耐えながらチャーリーはビーグル犬に訪ねました。ビーグル犬は爪楊枝で歯間をほじり、歯垢を舐めて空腹をしのぐ作業に熱中していましたが、突然チャーリーから呼びかけられたのに対する返答の猶予を求めてなのか、それとも単なる思いつきか、口元に前肢を当てると小首をかしげ、目を細めて極めて下品に、
・イシシシシシシ(笑)
 とおよそスヌーピーらしからぬ好色な笑い声を満足げに上げました。
 あーあれならオレ知ってるよ、あの笑い方はケンケンだろ?と野原ひろしはポン、と手を打ちました。だけどそれはハンナ=バーバラ・プロ作品でしょう?とスノーク
 細かいこと言いなさんな、とひろしはスノークのグラスにビールを注ぎ足すと、おれにしてみりゃスヌーピーだろうとムーミンだろうとケンケンだろうと違いはないよ。
 だったらあなたがたご一家はどうなります?たとえば私たちなんかはサザまる子さんやあなたがたご一家によって「お茶の間」と呼ばれる生活様式を知ったのですがね。
 確かに「お茶の間」はこの国独特の暮らしぶりだろうね、とひろしは自分のグラスにもビールを足しました。でもサザまる子さんっていったい、何のことだい?
 ああ、商標権がうるさいんですよ。そう答えてスノークもイシシシシシ、と笑いました。