人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

著者近影

 これらは『全詩集大成・現代日本詩人全集』(東京創元社1955~1958、序巻+全15巻)収録掲載の著者近影から複写した。当時物故詩人は本人の写真の選択の意志はないし、撮り下ろしでもないから、全集刊行時存命の著者に限った。まずは村野四郎(1901~1975)。

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 思索家らしいポートレートになっている。一面村野四郎はリケン工業の重役でもあった。哲学者っぽいポートレートならば吉田一穗(1898~1973)などはどうか。生涯詩人以外の職には就かなかった人だった。

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 パイプが効いている。それでは、ダンディーではこういうタイプもあるぞ、と安西冬衛(1898~1965)を見てみたい。ペダントリーに富んだ作風でも吉田一穗に共通するが、哲学的な一穗に較べ安西のペダントリーは偏執的な即物主義を感じさせる。輸入商社マンだった人で、青年時代に事故で片脚を失っている。

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 ではいかにもアーティストっぽいポートレートはというと、北園克衛(1902~1978)だろう。実際美術作家で、デザイナーとしても名をなした人だった。

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 以上の詩人たちはおおまかに日本のモダニズム詩人たちに分類される。近藤東(1904~1988)も斬新な作風でデビューしたモダニストで、旧国鉄の管理職で詩壇のオーガナイザーだった人。1987年に一巻本の大冊『近藤東全集』が刊行され、翌年逝去した。これもまたスマートなポートレートを提供している。

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 モダニズムというよりプレ・モダニズムの詩人だが、21歳の『ダダイスト新吉の詩』1923で衝撃的デビューを飾り中学生の中原中也を熱狂させた高橋新吉(1901~1987)は壮絶な半生を送り、戦後にようやく生活と心身の安定を得た。回復不可能な病状から奇跡的な復帰を果たした人で、この穏やかなポートレートからは想像もつかない。

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 最後に、オックスフォード大学中退、慶応大学英文学科教授で文学部長、芸術院会員、ノーベル文学賞候補、勲二等瑞宝章受勲と社会的名士をきわめた西脇順三郎(1894~1974)。20世紀日本最高の詩人、モダニズムの頂点とも目される人だが、この人の、たぶん西脇自身のリクエストによる撮り下ろしの著者近影はこういうものだった。さすがだ。

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