人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(45)

 ボーくんはポケットから小石を取り出すと、
・見て……
 とかすかべ防衛隊の仲間に呼びかけました。しんのすけたちはボーくんを半円形にとり囲み、ボーくんの手のひらの大小さまざまな小石を見つめました。ボーくんはかすかべ防衛隊の参謀であり、生き字引であり、哲学者と預言者でもあり、小石コレクターでもありました。ボーくんとしては小石以上の石もコレクションしたいのですが、幼稚園児のポケットで運べる大きさには限界があります。それに小石にも世の中に同じ小石は二つとないことに、ずっと前からボーくんは敬意を払ってきたのです。
 何?占い?それなら私も占ってほしいことがあるわ、とネネちゃん。ぼくも、とマサオくんと風間くんが言いかけようとすると、ボーくんはそれは後、今はこの石を見て、と茫洋と、しかしきっぱりと言います。そうだゾ、おらもそう思うゾ、としんのすけ。お前も今そう言おうとしてたろ、と風間くんが突っ込みましたが、いやいやキミたちと一緒にしてもらっちゃ困るんだよねえ、としんのすけは得意げです。相手にしていても仕方がないので、風間くんはボーくんに、この小石に何かあるのかい、と率直に質問しました。
・何か言おうとしている……
 と、ボーくん。つまりは小石が何かを語りかけている、ということらしい、と風間くんも見当をつけました。えっえっ、ぼく話についていけないよ、とマサオくんが慌てます。常識的にはマサオくんの反応の方が尋常なのですし、ネネちゃんといえばひと目見た最初から、なーんだ、ただの小石じゃないの、と興味を失くしていました。これもネネちゃん的にはそうでなければらしくないので、かすかべ防衛隊はいつもの調子だったということです。
 問題はボーくんの真意でした。ボーくんには現実主義に徹した面もあれば、超現実の世界まで透徹してしまうことがあり、ボーくんにとってそれは大差ないことでしたが、おおむねヴァーサタイルなかすかべ防衛隊の面々にも時々それはつき合いきれないことがありました。ボーくんの直感が正しくてもあてにならないようなことでも、それ自体は問題になりません。問題があるとしたら、ボーくんが正しい何かを探り当てたとしてもかならずしもかすかべ防衛隊が対応はできないことです。どうやら今は、そういう事態に陥っているようでした。