Yes - The Lost Broadcasts (Voiceprint,2009)
Yes - The Lost Broadcasts ~ Remastered (Voiceprint,2009) : http://youtu.be/SszeZhF9Xq4
1. No Opportunity Necessary, No Experience Needed (Beat-Club 1969) 00:00
2. Looking Around (Beat-Club 1969) 04:40
3. Survival (Beat-Club 1969) 08:41
4. Time and a Word (Belgian TV 1970 Playback show Lol) 15:34
5. Yours Is No Disgrace (Beat-Club 1971) 20:10
6. All Good People : Take 1 (Beat-Club 1971) 31:15
7. All Good People : Take 2 (Beat-Club 1971) 35:10
8. All Good People : Take 3 (Beat-Club 1971) 39:00
All Title written by John Anderson,exept 4(J.Anderson,David Foster),6-8(J.Anderson,Chris Squire),5(Yes),1(Ritchie Heavens)
[Personnel]
Jon Anderson - Vocals
Peter Banks - Guitar on tracks 1-4
Bill Bruford - Drums
Steve Howe - Guitar on tracks 5-8
Tony Kaye - Organ
Chris Squire - Bass
Yes - The Lost Broadcasts DVD
(Voiceprint Records VPDVD71)
When something like this appears, just a month or so after seeing the band in December 2009, it sure is a trip to the past. The current line up has only Chris Squire of the original members that played on most of this DVD (remember Steve Howe was not the original guitar player). Yes, they look a bit different now. Anyway, what classic footage and very well restored and presented. Any fan of early YES will for sure really enjoy this even though it is not very long (43 minutes). The first three tracks, No Opportunity Necessary No Experience Needed (Richie Havens), Looking Around and Survival are all from November 1969 (in black and white) and without Steve Howe. Banks and Tony Kaye were also amazing players as this is pretty intense stuff and check out the young Bill Bruford! Jon’s voice had not really matured into what it would later become here. And Yes, Chris Squire is still leading the sound with the heavy Rickenbacker bass and in your face style. Time and a Word is from February 1970 (and is lip synced) and then we have Yours is no Disgrace with Steve Howe from the German TV (Beat Club) April 1971. This is an amazing version with super cool screen effects and psyched out stuff. The liner notes say there is another filmed version of Yours is no Disgrace played a bit faster but it is not here. Pity. Also included are 3 takes of All Good People from the same broadcast. Great period material.
(From Voiceprint Records HP)
イエスは公式ライヴ映像作品の多いバンドで、特に『こわれもの』Fragile,1971でアンダーソン(vo)、ハウ(g)、リック・ウェイクマン(key)、スクワイア(b)、ブラフォード(ds)とスター・プレイヤー揃い踏みになってからは、次の『危機』Close to the Edge,1972を置きみやげにブラフォードがキング・クリムゾンに引き抜かれアラン・ホワイトに交代するとはいえブラフォードよりは大味なホワイトのドラムスはかえってバンド・アンサンブルの安定につながり、メンバー・チェンジごとにその時期を代表する映像作品が制作されることになった。ただし『こわれもの』はイエスの第4作なので、デビュー作から3作目までの時代の代表的映像がこれまで曲単位で各種オムニバス映像集にあるだけで、この2009年リリースのDVDは大いに待望されたものだった。発売元はプログレッシヴ・ロックの発掘や再発に定評あるヴォイスプリント・レーベルで、同社は丹念なリサーチやリマスタリングでも信頼がある。
そして発売された本作はさすがヴォイスプリントだけある高品質の発掘映像集だったが、おそらくマスターに欠損や激しい劣化のある映像は収録を見送ったのだろう。8テイク6曲、総計43分と、ヴォリュームではやや物足りないものになった。曲は最初の3枚のアルバムから均等で、『ファースト・アルバム』から『ルッキング・アラウンド』と『サヴァイヴァル』、セカンド『時間と言葉』から『チャンスも経験もいらない』とアルバム・タイトル曲、ここまでがオリジナル・メンバーでギターはピーター・バンクスになる。ギタリストがスティーヴ・ハウに代わったサード『イエス・アルバム』から『ユア・イズ・ノー・ディスグレイス』『心の光(3テイク)』と、選曲は満遍なく、アルバムごとのカラーを示した曲が選ばれているものの、3枚のアルバムから2曲ずつでは、やはり少ない。これが4曲ずつならアルバム収録曲のほぼ半数で、ラジオ放送用音源ならアルバムほぼ全曲がスタジオ・ライヴ録音で残されているのだ。79年までのイエスはアルバム全曲をラジオ出演ライヴなり、一般公演で演奏してしまうことでもコレクター人気のあるバンドだった。
(日本盤ジャケット。文字色違い)
ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドに次いで、イエスは映像やライヴ音源の流通が盛んなバンドで、ザ・フーやジミ・ヘンドリクスあたりと同格だろうと思われる。ジミは短命だったし、フーはアルバム、ライヴともに活動期間と休止期間が交互なので、いまだに精力的に活動を続けるイエスは重要性やカリスマでは格下でもアイテム数ならツェッペリンやフロイドを越えるかもしれないのだ。キング・クリムゾンも多いがポピュラリティではかなわない。プログレッシヴ・ロックは欧米基準だとサイケデリック・ロック+スペース・ロック=プログレッシヴ・ロックなので、トリップ感皆無なクリムゾンはプログレッシヴ・ロックでは傍系とされる。ジェネシスもその意味ではロキシー・ミュージックと並んでアート・ロックと考えられるので、欧米では一般的な分類としてサイケデリック・ロック+スペース・ロックという基準のプログレッシヴ・ロックならば、ピンク・フロイド、ムーディ・ブルース、イエスの大衆的人気の方が重視されることになる。
プログレッシヴ・ロックの代表作といえば、キング・クリムゾン『クリムゾン・キングの宮殿』1969、ピンク・フロイド『狂気』1973がまず思い浮かぶが、日本ではプログレッシヴ・ロックとしてはジェスロ・タルは数えられない。タルの『ジェラルドの汚れなき世界』1972、『パッション・プレイ』1973はともにアルバム1枚全1曲の大作で、しかも両作とも全米1位の大ヒット作だが、クリムゾンともフロイドとも似ても似つかぬ音楽をやっている。だが独伊仏などのヨーロッパ圏のロックではタルはクリムゾンやフロイドと同等か、それ以上に影響力の強いバンドなのが、ヨーロッパ圏のロック(特に独伊)を聴くとわかる。
『クリムゾン・キングの宮殿』『狂気』と並ぶイエスの傑作は『危機』だろうが、イエスの音楽もまたクリムゾンにもフロイドにも、もちろんタルにも似ていない。クリムゾンとフロイド、タルにもし共通点があるとすれば、暗さ、狂気、強迫的抑鬱などといったあたりだが(クリムゾン、タルと並ぶ影響力を持つヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターや、初期ジェネシスにも共通する)、イエスはあっけらかんと健康的なプログレッシヴ・ロックなのだ。デビュー作、セカンド辺りではイギリス版のヴァニラ・ファッジを狙った作風だった。それは初期ディープ・パープルも同じで、ヴァニラ・ファッジはプログレにもハード・ロックにも進めるプロト・プログレ・ハードだった。
デビュー当時のイエスはアトランティック・レーベルがレッド・ツェッペリンに続いて送る大型新人バンド、というプロモーションがされていた。当時はプログレッシヴ・ロックとハード・ロックは未分化でもあったのだが、『クリムゾン・キングの宮殿』の影響はイエスとジェネシスを直撃した。第3作『イエス・アルバム』ではキーボードは初代のトニー・ケイのままだが、ギタリストがハウに代わってサウンドが一変し、イエス独自の作風が確立する。
曲もそれまではアンダーソン単独曲が多かったのだが、ハウ加入以後はアンダーソンとハウの共作が基本になる。ハウを一言で言えば通常のコード・カッティングをほとんどしない変態ギタリストで、ヴォーカル・パートだろうが何だろうが1曲全編でリード・ギターを弾き倒してしまう。これは次作『こわれもの』でリック・ウェイクマンが加入してさらにエスカレートし、ギターもキーボードもベースもほとんど独立したラインを演奏をしていて、いわゆるバッキング・パートが存在しない、という無茶なアンサンブルを実現してしまった。
イエスの音楽はジョン・アンダーソンの楽天的ユートピア思考に凄腕プレイヤーが寄ってたかって満艦飾のサウンドを演出したもので、意味ありげに見えて内容は単純で、空疎とすら言ってもいいものだが、それを言えばフロイドやクリムゾンだってだいぶうさんくさい。ジェスロ・タルとジェネシス(ピーター・ガブリエル在籍時)にようやく反逆性が認められる程度のものだろう。イエスの場合デビュー作とセカンドで終わっていたら、廃盤マニアの間でのみ珍重される「惜しくもB級」バンドとして歴史に埋もれていたかもしれない。
アンダーソンとスクワイアが、トップ・ギタリストと定評あるピーター・バンクスを解雇してまで(実は『宮殿』だけで解散してしまた第1期クリムゾンからロバート・フリップを勧誘すらしたらしいが)スティーヴ・ハウを加入させたのが、イエスを大化けさせた。
このテレビ出演映像でも、ハウの入った5.以降は格段にスケールを増し、アレンジや構成も凝りに凝ったものになるのがわかる。イエスの欧米での人気はそうした、音楽的スペクタクル性にあるのだろう。