人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(71)

 最終章。
 チャーリー・ブラウンは自分を、もう長いこと泥の中を匍匐前進しているだけのアメーバか繊毛虫のように思いました。アメーバやゾウリムシ、また繊毛虫などの単細胞生物(たんさいぼうせいぶつ)とは、体が複数の細胞からできている多細胞生物に対する言葉であり、1個の細胞だけからできている生物を指します。単細胞生物原核生物と、原生生物に多く、菌類の一部にもその例が見られます。
 単細胞生物には寿命がないと思われがちですが、接合による遺伝子交換をさせないよう注意深くゾウリムシを培養するとやはり死に至ります。してみると、チャーリーが移動を続けるのも接合による遺伝子交換を本能的に求めて、自己の生命を維持しようとしてのことなのでしょう。だとすれば、とチャーリーは回らない頭でぼんやり考えました、このまままるで誰とも接触のない徘徊が続くかぎり、遅かれ早かれ死ぬのは遠くない。だがもし本能によって導かれているなら、もうまともな思考力すらない自分にそれ以上の選択肢が他にあるだろうか。
 さあみんなリアルおままごとをやるわよ!とネネちゃんは宣言しました。声の調子がいつもより高いのは、それだけムキになっている証拠です。彼女の命令は絶対でした。風間くんは何やるの、とさりげなく聞きながら内心ではびくびくし、マサオくんはすっかり慌てふためいていましたが、二人とも恐々としているのは同じことでした。ボーくんはいつでもボーくんなので、何を考えているのかはわかりません。イヤだなあネネちゃん、としんのすけは混ぜっ返しました、リアルおままごとならもうさっきからやっているじゃあないの。さっきから、っていつからだよしんのすけ、と風間くんが突っ込みました。えー、そんなこともわかんないの?いちいち回りくどいやつだな、ネネちゃんが言い出したのはつい今しがたのことじゃないか、と風間くん(そうだよ、とマサオくん)、ボーくんは「ボー」と言いました。
 もおみんなワカラズヤさんなんだから、としんのすけ、そして声をひそめて、オラたちが出てきた時にもうわかっていたじゃない、だってオラたちがここにいるのはおかしいんだから、これって全部リアルおままごとみたいなもんでショ?とこともなげに言い放ちます。
 ですが私たちがのっぴきならない事態に直面しているのは確かなことでした。今は仲間割れ、と言っても二人だけですが、争っている場合ではないのです。