人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(9)

 チッ、っとミッフィーちゃんは舌打ちをしました。もうちょっとであの客たちも追い返せそうだったのにねえ?そんなことしてどうすんのよ、と大胆なメラニーはせせら笑い、気弱なアギーはまたもやぶるぶると震え、鈍いバーバラはやはりぽかんとして、クールなウインはやはり無表情でした。でもそれじゃこのお店に迷惑じゃない?とアギー、それに私たちに得にはならないわ。なるわよ、とミッフィー、バーバラの彼氏にテイクアウトオンリーの店番してもらってるから、この店に入れなきゃ仕方ないからうちのお店でカレーピザでも買っていくわよ。あんたそういう小さな目的で来たんじゃないでしょ、とメラニー吹き出しました。あれ、そうだっけ?そうよねアギー?
 何で私に振るのよー、とアギーは泣きたい気持になりウインに助け舟を求める眼差しを投げかけ、目も合いましたが、ウインはわれ関せずという様子で持参したニンジンをかじっていました。お客さま、お持ち込みはご遠慮願います、とメラニーが真面目くさってウインを諭すと、水、とウインが言うのでミッフィーが笑いながらバーバラにセルフサービスの水を汲ませに行かせました。くまの方が押しが強いので、事前にトラブルを回避できるからです。
 ミッフィーたちは店の入り口近くのテーブルを囲んで、入ってくる客には片っ端から因縁をつけていましたが、ミッフィーたちのうっぷん晴らしにはなってもいまひとつ決定的な営業妨害にはなっていないようでした。つっけんどんに追い返すようなことを言っても、どの客もそれほど躊躇なくカウンターに直進してさっさと注文を済ませてしまうので、店の評判を下げる目的に届いているかもわかりません。
 つまりそれって、とアギーは気づきました、私たちがこのお店の女の子じゃなくて、このお店のテーブルを借りて客引きをしている街の商売女にしか見えていない、ってことじゃないかしら。だから無視されてるんで、それってこの店の女の子より下に見られてるってことよね、とメラニー。何でまた心の中を読むのよ!とアギーは内心で抗議しましたが、そんなことを言っている場合ではないとも気づきました。メラニーの言う通りなら、自分たちのお店はもう勝負する前から負けていることになるからです。それはあまりにみじめったらしいどころか、60年も続いた老舗ののれんに泥を塗り、ついには店を畳むことになりかねない事態を予兆すらもしていました。