人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(14)

 ありがとうボリス、とバーバラはボーイフレンドをねぎらうと、ボリスは脱いだエプロンとレジの鍵を渡しながら、そう悪い売り上げじゃなかったよ、とミッフィーに報告しました。ミッフィーは受け取った鍵でレジスターからレシート総計を打ち出して、あんたテイクアウトだけじゃなくてバーテンダーもやってたの?うん、座って休ませてくれって客ばかりで断り切れなかったんだよ。ひとり入れたら後から来る客も断れないしね。バーバラ!とミッフィーは鋭く呼びました。はい、何あに?ボリスに接客させたら無資格民間人を使役した軍務違反になります。はい。ボリスの分はあんたが仕事した、ってことにしとくからね。
 でも私だけじゃ、と言いかけるバーバラに、くまのアリバイはくまにしか務まらないでしょっ?あんたがひとりでシフトをこなしていたのよ、いいわね、と言いながら、ミッフィーは内心穏やかならぬ気分でした。ミッフィーたちがハローキティの店を偵察していた間、ボリスはひとりでディヴィジョン♯1総員が稼ぎ出す注文を捌いていたのです。これはひょっとしたら、ハローキティの店に流れた客筋以上に由々しき問題でした。おかみの自分は残るとして、バニーズパブ・ミッフィーズからボリスのような従業員ばかりを置いて兄貴喫茶マッチョーズにした方が良い、と軍部上層部から編成変えが強要されるかもしれない。
 ミッフィーはさっき覗いてきたばかりのディヴィジョン♯2を思い出しました。どうもこれといって取り柄のないこねこちゃんパブのようで、サーヴィスの質なら老舗の自分たちが上という自信がある。それがまずいのではないか。ぼんくらのボリスひとりを置いておいた方が売り上げも上々なら、お客さんが求めているのはサーヴィスではなくて静けさと無関心なのではないか。ミッフィーには軍務を終えた兵卒たちが、どこの店に行く?落ち着いた店で休みたいな、あのうさぎの店?騒ぎたいならいいけど、ちょっとくつろぐにはうざいんだよな、と会話を交わしている様子が脳裏に浮かんでくるようでした。
 しんどいわあ、とミッフィーはため息をつくと、自分は事務仕事があるから適当に交替してやってて、指名があれば店に出るから、と事務室に引っ込みました。60年もやっていて後継者を育てなかった自分が悪いのかもしれない、とミッフィーはうさぎらしからぬ反省をしました。その時メラニーがノックもせずに部屋に入ってきました。