人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(17)

 ナインチェがオフィスに引っ込んだので、アーヒェたちの話題は何となくナインチェについての話になりました。感謝しなくちゃね、と珍しくウィレマインが話題の口火を切りました、何だかんだ言っていちばん働いているのはナインチェだもの。そう言いながら清掃用具をかたづけているので、清掃用具は用具戸棚の前のバルバラに手渡すことになります。全員の視線がバルバラに集中しました。バルバラはじわっ、と発汗するのを感じ、いっそ清掃用具ごと戸棚の中に隠れてしまいたくなりましたが、そういえば今日は営業前のミーティングがまだなのに気づきました。朱に交わればうさぎと同様なバルバラとはいえ、素がくまですから仲間たちよりは少しは物おぼえが良いのです。
 だからバルバラは、ナインチェはミーティングもしないでどうしたのかしら、とだけ言えば良かったのですが、それは先ほどのウィレマインの発言を受けるというよりも別方向にかわしてしまうことになり、さらには今日の営業はナインチェからの指示なしで動いてしまっていいいと任せられているのか、単なる物忘れか、下手に訊きにいくと私がいなくちゃ何もできないわけ?と開き直られて叱責されかねないか、どのみちミーティングをしたとしてもその内容はいつまで経っても変わり映えのしないものですから週に一回でも、月や年に一回でも、何かあった時だけにでも行えばいいのです。
 要するに気がつかないで普段通りに店を開ければ、ミーティングをしたもしないも関係なく、そのことでナインチェは何か言ってくるかもわかりませんが、ナインチェを除く4人が4人ともミーティング、何それ?とすっとぼければナインチェと言えどもそれ以上の追求はできないはずで、バルバラは束ねた矢の譬えを思い出しました。ひとりは弱くても徒党を組めば強い、というあれです。
 そう上手くいくといいけどね、と窓拭きをしていたニナがつぶやいたので、バルバラを含めた全員が大混乱に陥りました。ニナの独白はウィレマインの発言への感想か、それとも誰かの心を読んだとも解釈できるものだったからです。バルバラにとってはミーティングなしでも問題ないか、でしたが、アーヒェはウィレマインの発言には素直に肯けない以上そうはいかない、と思い、ウィレマインは口ではああ言うものの、本心では何を考えているかわからない種類の少女でした。そして彼女もまた、ニナを見透かしているとも見えました。