人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(41)

 第五章。
 この町でうっかりすると失ってしまうのは、ハローキティのリボンに限ったことではありませんでした。怪奇現象に法則性を求めても仕方ないことですが、社会のルールでは重要なものほど法的な所有権が厳重化されているものです。たとえば親権など。離婚する親Aと親Bが子どもの両腕を左右から引っ張りました。子どもが痛がって泣き出したので親Bは子どもの手を放しました。子どもは最後まで手を放さなかった親Aのものになるのが社会のルールというものです。かように法は親どうしが別れることになれば片方の親は法的に親子ですらなくなるような処置すら行いますし、遵法義務が国民の総意であれば国家と剥き身で対立した個人には何の権限もありません。大事なものほど失われやすいのは、当然その値打ちが高いからに他ならず、誰かが失う分誰かが得をするのが世界の均衡というものなのです。
 ミッフィーちゃんのお店は、再びハローキティの店ができる前のような活況を取り戻していました。これはどういうことかしら、とアーヒェは思いました、まるでうちしかお店がなかった頃みたいに賑わっているということは、キティさんのお店に何かあったんじゃないかしら。そうね、きっとそうだわ、とニナが鏡台をピシッと閉めながら言ったので、アーヒェはまた頭の中を読まれたんじゃないかとゾッとしました。しかしこの場合のニナは必ずしもそうではないらしく、無口なウィレマインもぼんやり屋のバルバラも、何よりニナ自身がもともとアーヒェと同じことを考えていたようでした。社長室(正確には師団長室ですが)にいるミッフィーことナインチェを除き、全員が顔を見合わせました。よりそれを細かくいえば、アーヒェがニナをびっくりして見つめ、それに気づいたウィレマインがアーヒェを見つめ、その気配にニナがアーヒェとウィレマインを見渡し、それから三人がバルバラを見つめてバルバラもハッとして顔を上げ、そうして全員が顔を見合わせることになったのでした。
 気になるわね、と簡潔にウィレマインが言いました。また偵察に行く?とニナ、でも前みたいならともかく、今はお店が忙しすぎるわ。実際そうでした。開店前に皮を剥いておかなければならないじゃがいもだって、あの頃と今では比較になりません。お客さんに訊く?バレたらヤバいわ、それより、とニナ、ボリスに行ってもらってみたらどうかしら?もちろんナインチェには内緒でね。