人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(30)

 自由参加のサマーキャンプとはいえパインクレスト小学校は公立校ですから、授業はすべて義務教育です。私立校ならレジャー授業もあり、必修科目ではないものもあるでしょうが、公立小学校の場合は欠席科目には何らかの理由が必要になるでしょう。宗教的信条の場合は信教の自由上詳細を明かす必要はないでしょうし、政治的な理由の場合でも不参加は認められるでしょうが、微妙な場合もあり得ます。たとえばご両親がフリーメーソンであるとか。成人であれば思想的理由というのもありでしょうが、小学生の場合お父さん・お母さんの思想的立場と児童教育の平等とは一応別にすべき、とする学校側の教育方針もあるのです。そうでなければ義務教育としての学校教育自体が無意味ということになります。
 あとは生徒自身の希望ですが、夏休みくらい学校のことを忘れてのんびり過ごしたい、という生徒だっているわけです。サマーキャンプに出る出ないでそう大したこともなければ、気乗りしない生徒は出なければいいだけです。が、戦場見学となるとあまりに大きな経験の差がつきすぎて、出ると出ないでは大人と子どもほどの差があるのは明らかでした。友だちづきあいとは別の次元で、純粋に社会勉強としてもそうです。それにこうした体験は、個人で負うには重すぎます。こうした行事は団体学習だからこそ咀嚼できる側面が大きいと、学校側も配慮しているでしょう。
 どう思う?とみんなはフランクリンのまわりに集まりました。なぜなら前回の非公式選挙で、生徒会非公式会長選にはフランクリンがプレジデントに選ばれたからです。ちなみに対抗候補はルーシーで、アフロ系生徒にしろ女の子にしろ、パインクレスト小学校裏プレジデントがアーリア系男子以外の決戦投票になったのは初めてでした。もっとも、選挙しなくてもフランクリンほどかしこい少年はおらず、強烈なリーダーシップなら(反リーダーシップ、破壊力、つまり事態を滅茶苦茶にするのも含めて)ルーシーに勝る少女はいなかったからです。
 そうだね、とフランクリンは慎重に言葉を選びました。サマーキャンプに出たい人を基準にするか、出ない人を基準にするかで意見をまとめた方がいいと思う。ぼく自身は、自由参加という学校側の建て前には抵抗がある。
 ならどうすんの?とルーシー、全員参加か全員不参加?サボタージュ突入ってわけね。パインクレスト小の叛乱!上手くいくかしら?
 第三章完。