そこそこに緩い坂道で、車通りも数は少ないが加速・減速しながら通るので気をつけなければならない。そうして道に注意していると、奇妙な三輪自転車の影を見つけた。
三輪自転車の影を支える棒の影をたどると、この緩い坂沿いの商店街の歩道沿いに等間隔に立っている電飾がそれまで三輪自転車の影のように見えていたのに気づいた。
この電飾のデザインに、影まで考えられた芸術的意図はないだろう。ましてや夏の強い日差しでくっきりと奇妙な影を落とすことまでも、広告効果を狙ったとは思えない。
だが仕組んだものではないだけ、この電飾の奇妙な影には素朴で強い印象を気づいた人に与える力がある。おそらく日差しの強い夏しか見られない、特定の季節だけの現象なのがなおさら、この電飾の影を舗道に焼きつける。