人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ロバート・クリーリーの短詩5編

 ロバート・クリーリー(Robert Creeley, 1926-2005)はアメリカの詩人。日本の現代詩にも早くから関心が深く、北園克衛(1902-1978)の英文詩集『Black Rain』を出版。雄弁的な長詩が主流の欧米詩に反して、俳句の欧米での一般的注目以前に俳句的な圧縮された簡潔さと破格文法を取り入れたのは、北園経由の俳句性が大きいと思われる。北園克衛に師事した藤富保男(1928-)による優れたクリーリーの代表詩の訳詩をご紹介する(「ユリイカ臨時増刊・総特集/アメリカの詩人たち」青土社1980年6月刊)。『みんなが言うように』(Like They Say)のみ原文を引く。藤富氏の訳詩の見事さがわかる。
 (Robert Creeley at the university in a rainy day)

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Like They Say

Underneath the tree on some
soft grass I sat, I

watched two happy
woodpeckers be dis-

turbed by my presence. And
why not, I thought to

myself, why
not.

              by Robert Creeley

みんなが言うように

木の下の あるやわらかい
芝生にぼくは坐ってた ぼくは

二羽の楽しそうな キツツキが
ぼくがいるので おびえているのを

見ていた 一体
なぜなんだろう ぼくはこっそり

ひとり言を言った な

               (Like They Say)


カラス

食事をする部屋にいるカラスは僕がきらいだ
ぼくがエサをやらないからだ

ぼくは奴を殺したから
残しておくものなんかなくなっちゃった

そしてぼくは杖で奴の頭に一撃を加えたから
もうぼくをあざけり笑うものなんかない

病気は後悔の憎しみだ
奴がほしがってるものがないとわかると
                 (The Crow)


喜び

ぼくは
何時間もからっぽの穴を
考えながら見ていた その中に
何かが入るだろう

するとそれは
がらくただらけになる
そこに存在する
無限の空虚さ
                   (Joy)


アリス

彼女の片方の目に
りんご
                   (Alice)


座っていると

ぼくたちの前には
空が長くのびていて
道は

水路の方に走っていて
鳥たちは
かすかに白い空の中を

とんでいる 砂と水を
動かしつつあるひびきが
くりかえし くりかえし

音をたてる 風は
たえず
吹くのだ

座っていると
                 (As we sit)