人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(73)

 昼間、太陽の光が地表面に当たっている時、地表面は太陽放射を受けて温度が上昇します。逆に夜間は、地表面から宇宙空間に向けての放射があり、地表面の温度は低下します。このとき、大気中に雲が存在すると、雲からの放射を地表面が受けることにより、地表面の温度低下が妨げられる状態になります。一方、大気中の水蒸気が少ないよく晴れた夜間(日本では冬季間が代表的)には、地表からの放射はそのまま宇宙空間に放出されるため、地表付近の温度が低下しやすいのです。放射冷却と呼ばれる現象はこの状態を指します。
 デイジーとキャシーの姉妹は交差して倒れたグラスを挟んでカウンターに凭れて身動きしませんでした。キャシーの右隣にはミミィが突っ伏し、だらりと下げた手から落ちたグラスがストゥール席の足元で粉々に砕けていました。デイジー、キャシー、ミミィの口もとには溢れ出るまではいかない吐瀉物が滲んでいました。それは古典的なアーモンドの香りのする毒薬によるものと思われました。
 一方、アギー、バーバラ、ウインたちはもっと効果の遅い分だけ苦しみの長い中毒死の様子が見られました。苦しみながらどうにかしてこの窮地を逃れることは出来ないだろうかと、もがきながら大量の水を飲んで無理に吐瀉したり、水盥に水を汲んで顔面を浸したりと無駄な悪あがきの最中に結局、努力の効果がまったく徒労に帰したのを悟り、大きく驚愕の眼を開き二度と動くことはなくなっていました。
 メラニーすら従業員も使用します、と貼り紙のある女子トイレの個室にこもって、誰にも看取られることのない最期を迎えていました。肩まで上体を西洋式便器の中に突っ込み、排水管に潜れば最後の望みがあるとでも言わんばかりに見えましたが、そんな望みは現実にはかなうまでもないことでした。
 ボリス、ダニエルのふたりは後頭部を鈍器の一撃で一瞬に頭蓋骨骨折を負わされ、事実上の即死殺害された遺体となってうつぶせに倒れていました。毒殺よりはまだ親切な殺され方と見えるのは、女の子たちより苦悶の様子が比較的軽いことでした。こうして従業員たちは、アルバイトのマイメロディ以外の全員が死んでしまったのです。
 違う、とハローキティは思いました、私が望んだのはこんな結末じゃない!確かに私はリボンを失ってしまったけれど、何もかもを失いたいわけじゃない。
 でもミッフィーちゃんは、この結末にもまんざらではなかったのです。