人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(79)

 まずその頭のかぶりものを取って本当の姿をさらしなさい、とミッフィーは言いました。ハローキティは命じられるがままに頭部をさらけ出しました。その黒髪は腰まで長く、キティはミッフィーをキッと見つめました。なかなかいいじゃない、とミッフィーは上っ面だけ感心してみせると、三食パックの納豆を取り出すとハローキティの髪に和えて、ヘアブラシでじっくりと粘りを立てました。鏡をご覧なさい、今あなたの髪がどういうことになっているか。ミッフィーちゃんは自分が凌辱したハローキティの写真を撮影すると、今度はあらかじめ用意してあった果物ナイフを取り出しました。心配しなくていいのよ、とミッフィーちゃんは言いました、ちょっとは痛いかもしれないけど、ほんとにちょっとだけだから。
 その頃、ドアを開けて診察室に入ってきたのはきたのはなかなかの美青年と、明らかに健康を害している老婦人でした。よろしくお願いします、と美青年は言いました。お母さまはどのようなご心配ですか。いえ、母ではありません、と青年は老婦人を振り返りながら、妻です。それは失礼しました、と私は言いながら、診察机の影になって患者からは見えない位置で、受付から回ってきた身元照合書類に目を通していました。治療の必要はない患者であることは老婦人の出生から明らかでした。すでに開戦から事態は急激な内政政策が施行されており、この患者は人種的に、また階級的にも国家の庇護をほぼ完全に剥奪されており、おそらく十分な医療を受けられるほど政情が安定するまでには、健康の回復は望めないでしょう。ここは名ばかりの慈善病院ですから毎日のようにこんな患者が困窮して訪ねてくるのですが、風邪薬や咳止めを渡すか、せいぜい栄養・鎮痛点滴を打つ程度の対応しかできません。慈善医療ではそれ以上本格的な治療は禁じられているのです。もし本格的な入院治療を行えば生涯入院の患者の受け入れもできることになり、現在のような戦時下では病院には死に場所を求める人が列をなすでしょう。認めざるを得ませんが、それは慈善病院には荷が重すぎることなのです。
 ぼく、チェブラーシカは親友のわにのゲーナと、せっせとハローキティの店の酒蔵からお酒や缶詰を盗み出して荷車に積んでいました。こっちの店はもう営業再開しないんだろうね、誰もいないし。もう一軒はどうだろう、とワニのゲーナ、今度来る時には、行ってみようか?
 次回最終回。