人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

遅ればせのローストチキン

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 まずはレシピから始めると、家庭を持っていた昔にはよく作った。しょうゆとみりん、おろし生姜、砂糖を入れたビニール袋(スーパーの濡れ物袋を二重にすれば良い)にチキンレッグを1晩冷蔵庫で漬け込み、オーヴン(オーヴントースターが楽で良い)で約20分じっくり焼く。ガスオーヴンはあまり設備のある家はないだろう。ガスコンロに魚焼きオーヴンがついていれば、それでも良い。ガスコンロの魚焼きオーヴンはけっこう使えて、ピザも焼けるし焼きトウモロコシも作れる。オーヴン機能がついている電子レンジもあるが、あれは内部の容積が広すぎて効率が悪い。オープン式トースター、またはガスコンロの魚焼きオーヴンがいい。チキンレッグは裏表を何度かひっくり返すが、焦げすぎるようならアルミホイルをかぶせる。出来上がりのローストチキンを買えば大した贅沢になるが、これなら安い鶏骨つき腿肉で、けっこう立派なご馳走ができあがる。
 本来のローストチキンは中抜きをしたホールチキンを丸ごと調理するが、発祥国のイギリスですらホールチキンを丸ごと焼ける大きなオーヴンは庶民の家庭には滅多にないらしい。せいぜい胴体、両脚を切り分けて別々に焼く。小ぶりなものなら魚焼きコンロでも焼けるかもしれないが、さすがにホールチキンでローストチキンを作ったことはないので焼き加減のコツを想像できない。焼き時間はチキンレッグのみの20分よりもかかるだろう。それともホールチキンを焼けるほどの大きなガスオーヴンなら相応に火力も強いのだろうか?

 20分というのをどう加減するかというと、ピンク・フロイドの『原子心母』LP時代A面全面のタイトル曲が23分44秒あるので、この曲をCDで聴きながら調理番をしていると具合良い。ピンク・フロイドはなかなか使い勝手が良くて、アルバム『おせっかい』LP時代B面全面の「エコーズ」が23分29秒あるが、中太のスパゲッティ乾麺を茹でるのに確かSEからギターが炸裂してくる箇所で湯切りするとちょうど良い茹で具合になった。もっともスパゲッティ茹で曲なら、クイックシルヴァー・メッセンジャーズ・サーヴィスの名曲「ザ・フール」12分7秒などは曲の終わりから逆算した方が早いのでピンク・フロイドより使える。
 こんな調子でスパゲッティの茹で方にこれまでどれほど工夫を重ねてきたかを書けばローストチキンよりも長くなるので話を戻せば、ここまでで疑問を感じた方もいらっしゃるだろう。ホールチキン以前に、下味の合わせ調味液のことだ。しょうゆ、みりん、おろし生姜に砂糖とは、牛肉や豚肉にも使われる照り焼きの味つけと同じではないか。これで薄切り牛肉を煮れば牛丼の具になるし、薄切り豚肉を焼けば豚しょうが焼きになり、たいへんご飯が進むというものではないか。

 実際こうやってできあがるのは照り焼きローストチキンなのだが、今年のクリスマスにもスーパーのお惣菜売り場をよく見ると、販売されているのはローストチキンの他にもスモークチキン、ローストターキーなどがあるが、ずばりローストチキンというとほとんど照り焼きで、一部甘草・塩こしょう焼きも置いてある。そこで本来のローストチキンの下味を調べてみると、塩こしょうに各種甘草を好みでミックスして下味をつけるものらしい。照り焼きも塩こしょう焼きも焼き方は天火であぶり焼きにするものだから、脂泡を多く含んだ鶏皮から脂が抜けて香ばしい焼き加減になり、見た目は全面茶色く(照り焼きの方が下味の分、色は濃いが)、卑近な例だがヤキトリのタレ焼きと塩焼きの違いと同じで、タレ焼きと塩焼きにどちらが正しいヤキトリかもないだろう。
 照り焼きは本当のローストチキンではない、と譲らない人もいるだろう。経験から言って女の人の方が融通が効かないのだが、イギリス式ローストチキンだって塩こしょうは必須としても家庭料理としては好き勝手に味つけされていると想像される。レモン汁とか合いそうだ。ハーブの好みはきりがないだろう。西洋帰化料理として和食化したローストチキンが照り焼き化したのは日本の万能調味料がしょうゆだったからで、では中華料理ではポーク&チキン・エキスを使ってローストチキンの下味にしているのかというと、それはわからない。

 ヤポネシアの誇る万能調味料には味噌というのもある。塩分大量の味噌は保存性も兼ねた下味調味料でもあるから、牛豚とも厚切り肉をばっちり包み込み、染み込む。鶏肉とだって合わないことはないが、鶏肉の場合あの鶏皮に旨味があるのでもあって、牛肉・豚肉の味噌漬けはあるが鶏肉の味噌漬けはどうだろうか?味噌煮込みならいけるだろう。しかし味噌漬け鶏肉のローストチキンというのはちょっと考えられない。そこへ行くとしょうゆは下味に使ってよし、仕上げの味つけに良しで、よく対にされるソースとは汎用性が違う。ソースは仕上げの味つけでこそおいしく召し上がれるが、下味に使うものではないだろう。最初は塩こしょうベースの本場の調理法から移入されたとしても、それなりに日本化される過程でも試行錯誤を重ねてきた上で、照り焼きローストチキンというものが定着したのだと思われる。
 実際にはクリスマス・チキンにはローストチキンに限らず、フライドチキンでも手羽揚げでも何でもいいようだが、フライドチキンは外食産業では低カロリー指向からシェアを落としているという。ファスト・フードでもフライドチキンからスライスしたローストチキンにサイド・メニューを推す展開がなされているチェーンがあるようだ。さらに進めばどの種の肉でもボイルするのが一番低カロリーな調理法なのだが、さすがにクリスマスくらいはドカンと脂ののったヴォリューム満点の肉塊にかぶりつきたいものだろう。なんだかまともな料理作文になってしまったが、年の瀬にそうそうヒネったことも思いつかないではないか。

 ついでに読んでいただいている方にアイディアを募りたいのだが、12月31日で完結する『夜ノアンパンマン』(全80回)の前に『戦場のミッフィーちゃん』(全80回)、その前は『スヌーピー外伝・ピーナッツ畑でつかまえて』(全80回)、その前は『偽ムーミン谷のレストラン』(全80回)で、そのムーミン谷がシリーズ第1作目だった。アンパンマンの後に何をやろうか思案中で、ムーミン谷→スヌーピーミッフィーアンパンマンと、シリーズが進むごとに確実にアイディアが枯渇している。というか、ムーミン谷80回で試せる手法はほとんどやってしまったので、スヌーピーミッフィーアンパンマンムーミン谷のヴァリエーションをやっていただけということでもある。
 別に自信作でも何でもないし、遊びで書いていた作文でしかないが(それを言えばこのブログは全部そうだが)、あれは『偽ムーミン谷のレストラン』というタイトルを思いついたら一気に第1回の内容が浮かんだ。後は「偽ムーミン谷」といういんちきメルヘン世界を書けばいいだけだった。そんな具合に、どなたかお題を振っていただければ次回作も早々開始します。いや、アクセス解析によると隔日で載せている音楽記事の方が読者は多く、さらに料理・アニメ記事を載せると閲覧率はずば抜けて高く、次いでかなり以前掲載した文学関連記事の閲覧が多くて、創作童話みたいなものを載せるより真面目な音楽記事(入念に下調べして聴きこんでいるので、下手な日本盤CDの添付解説より詳しく正確で視野が広い自信はある)に力を注ぐべきかもしれないが、音楽、文学、映画の記事は1本書くのは2日がかりになるのです。なので2016年も音楽記事(または映画、文学)と創作童話を交互にやっていくと思いますが、ぜひぜひアイディアお寄せください。ただし登録商標がうるさくないやつでお願いします(笑)。