再び列車内で追い詰められた3匹でしたが、また着替えさせられたサルとイヌをかばうでもなく、カッパはサルとイヌの素性を確認しました。彼は不法入国諜報部小冊子ラビット柳瀬、とサルを指し、そしてこいつは(とイヌを示し)やはり不法入国武偵高諜報科のアリス・リデルです。そうですよね?
そして僕らは最前線で戦ってきたのです。敵も味方もない壊滅戦の戦場で、現地ではもう僕らの生死は確認もできず、こんなところで生存していたら戦地に送られたのは一体誰だったかということになるはずだ。あなたたちがぼくらを殺しても、あなたたちはこの世界からも自分たちを抹殺することにはならず、僕たちが代わりに引き受けた従軍の意義も身代わり死体が発見されるとともに霧消してしまうということですよ。それに第一……。
カッパは目の前の相手を問い詰めました、あなたはウサギ、そしてこいつらはサルやイヌです。動物は動物を補食する以外では殺さない。僕たちだってピストルやナイフがあってもあなたたちを殺すことはない。僕たち動物同士が殺しあえますか?
ウサギは詰まって、後ずさりしました。
殺せるわ、と少女が言いました、だって私は人間だから。
人間だって動物です。
殺しあえる動物だから人間なのよ、とアリスは言いました、あなたたちがどんなに逃げ回ってきたかを探るのは、私たちの身代わり死体になって発見されたら徹底的に調べられるでしょう。私たちはヤドカリと貝がらみたいにあなたたちと二人一役になって、残るのはあなたたちの死体だけになるわけ。
この人でなし!とサルはボヤきましたが、突然いつもはおとなしいイヌがガアッ、とウサギと少女に飛びかかったのです。すかさずカッパが車両と車両の間のドアを閉めました。とにかく逃げるんだ、自由席の客車の中では連中だって手出しはできないに決まってる。
ですが客室は閑散としていました。まずいまずいまずい、と3匹は通路を進みながら、誰か乗客が座っているところへたどり着かなきゃ、そこで大騒ぎするだけでいい、乗務員を呼ばれて知らない駅でつまみ出されたってここで殺されるよりはずっといい。
すると金持ち風の身なりの男女が退屈そうに二人がけのシートに並んでいるのに差し掛かりました。サルは振り向くと、あっ毒グモとおねいさんや、と声に出して驚きました。
おねいさんまた僕たち助けに来てくれはったんやろ、とサル。何で知らんぷりなんや?