人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新・NAGISAの国のアリス(52)

 もっとましなことはないの?とアリスは思わずため息が出ました、答えのない謎なぞでヒマつぶしなんかより……
 すると帽子屋は居丈高になり、私のようにヒマさんと懇意でないなら、ヒマつぶしなどと無礼な呼び方は失礼だぞ。
 何のことだかよくわからないわ。
 ああそうだろうな、と帽子屋、きみはヒマさんと世間話したこともないだろうしな。
 たぶんね、とアリスは用心深く言いました、でも私だって世話しないときはわざわざヒマを割きはしないわよ。
 それでわかったろ、と帽子屋、ヒマさんは割かれるのが嫌いなのだ。しかし仲良くしていれば、時刻ならヒマさんがだいたいどうにかしてくれる。たとえば朝の九時、ちょうど勉強が始まるが、ヒマさんにちょっと合図を送るだけでいい。あっという間に時計はぐるり、もう午後1時、お弁当の時間さ!
 だったら都合いいだろうな、と3月ウサギが言いました。
 それは好都合ですけど、とアリスも言いながら首をかしげて、でもそうしたら、お腹が空いていないんじゃないの?
 最初のうちはね、と帽子屋、だけど慣れれば好きなだけ午後1時でいられる。
 アリスは感心して、ならそうしてるのね、あなたは?
 いいや、と帽子屋が悔しそうに言いました、こないだの3月にケンカするまでは……おまえの頭がおかしくなる直前のことだ、だろ?と3月ウサギを指さして、あれはハートのクイーンが開いた音楽会だが、歌の番が回ってきたのだ。
 「♪くらやみのなかのちいさなこうもり、
 いったい何をしているの?」
 ……知ってる?
 似たようなのは、とアリス。
 この歌の一番も終わらないのに、と帽子屋、クイーンが怒鳴りだしたのだ。「こんなのを聴くヒマはない!首を切れ!」とね。
 ひどい話!とアリス。
 それでヒマさんは首を切られて、と帽子屋、もう頼みを全然聞いてくれない。それからずっとここは午後6時なのだ。
 アリスはハッと気がつきました。だからここはお茶の道具ばかりなのね。
 帽子屋はため息をつき、ご名答。ここはいつでもお茶の時間なのだ。洗濯するヒマもありはしない。つまり……
 お茶の時間の次もお茶の時間?
 そうして次々回っていくのさ、と帽子屋、だから道具が足りやしない。
 でも一周したらいったいどうするの?とアリスは思いきって訊きました。
 すると聞いていた3月ウサギがあくびをしながら、話題を変えようや。起きろよネムリネズミ、おまえからは何か話はないのか?