もっとましなことはないの?とアリスは思わずため息が出ました、答えのない謎なぞでヒマつぶしなんかより……
すると帽子屋は居丈高になり、私のようにヒマさんと懇意でないなら、ヒマつぶしなどと無礼な呼び方は失礼だぞ。
何のことだかよくわからないわ。
ああそうだろうな、と帽子屋、きみはヒマさんと世間話したこともないだろうしな。
たぶんね、とアリスは用心深く言いました、でも私だって世話しないときはわざわざヒマを割きはしないわよ。
それでわかったろ、と帽子屋、ヒマさんは割かれるのが嫌いなのだ。しかし仲良くしていれば、時刻ならヒマさんがだいたいどうにかしてくれる。たとえば朝の九時、ちょうど勉強が始まるが、ヒマさんにちょっと合図を送るだけでいい。あっという間に時計はぐるり、もう午後1時、お弁当の時間さ!
だったら都合いいだろうな、と3月ウサギが言いました。
それは好都合ですけど、とアリスも言いながら首をかしげて、でもそうしたら、お腹が空いていないんじゃないの?
最初のうちはね、と帽子屋、だけど慣れれば好きなだけ午後1時でいられる。
アリスは感心して、ならそうしてるのね、あなたは?
いいや、と帽子屋が悔しそうに言いました、こないだの3月にケンカするまでは……おまえの頭がおかしくなる直前のことだ、だろ?と3月ウサギを指さして、あれはハートのクイーンが開いた音楽会だが、歌の番が回ってきたのだ。
「♪くらやみのなかのちいさなこうもり、
いったい何をしているの?」
……知ってる?
似たようなのは、とアリス。
この歌の一番も終わらないのに、と帽子屋、クイーンが怒鳴りだしたのだ。「こんなのを聴くヒマはない!首を切れ!」とね。
ひどい話!とアリス。
それでヒマさんは首を切られて、と帽子屋、もう頼みを全然聞いてくれない。それからずっとここは午後6時なのだ。
アリスはハッと気がつきました。だからここはお茶の道具ばかりなのね。
帽子屋はため息をつき、ご名答。ここはいつでもお茶の時間なのだ。洗濯するヒマもありはしない。つまり……
お茶の時間の次もお茶の時間?
そうして次々回っていくのさ、と帽子屋、だから道具が足りやしない。
でも一周したらいったいどうするの?とアリスは思いきって訊きました。
すると聞いていた3月ウサギがあくびをしながら、話題を変えようや。起きろよネムリネズミ、おまえからは何か話はないのか?