人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ソニー・ロリンズ Sonny Rollins & Co. - ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド God Bless The Child (RCA Victor, 1962)

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ソニー・ロリンズ Sonny Rollins & Co. - ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド God Bless The Child (Arthur Herzog Jr, Billie Holiday) (from the album "The Bridge", RCA Victor LPS-2527, 1962) : https://youtu.be/2qKLBmj1Emc - 7:25
Recorded at The RCA Victor Studio B, New York City, January 30, 1962
[ Sonny Rollins & Co. ]
Sonny Rollins (tenor saxophone), Jim Hall (guitar), Bob Cranshaw (bass), Harry "H.T." Saunders (drums)

 ビリー・ホリデイのオリジナル曲はあまりにビリー自身の歌唱ヴァージョンの存在感が大きく、またオリジナル曲のステージ定番曲定着率も高かったのでカヴァーが現れるのは'59年7月のビリーの歿後になりました。ビリーのためにソングライターが書き下ろした曲(「Lover Man」など)はビリー現役中にビリーを尊敬する後進の歌手によって歌われ、ビリーが掘り起こしてきた曲(「Willow Weep For Me」など)も同様でしたが、ピアニストのハービー・ニコルズ(1919-1963)の曲「Serenade」にビリーが作詞して歌唱曲にした「Lady Sings The Blues」などはビリーのオリジナルと見なされます。またビリーのオリジナル曲「Strange Fruits」やビリーのためにソングライターが書き下ろした曲でも「Goodmrning Heartache」などはジャズよりもR&B、ポップス、ロック系の歌手に採り上げられることが多いのも興味深い現象です。ビリーと同年生まれの国民的歌手フランク・シナトラの数少ないシナトラ自作曲「I'm A Fool To Want You」をビリーがカヴァーしてビリーのレパートリーのイメージの方が強い曲にしてしまったのが最晩年の2枚の弦楽オーケストラとの競演企画の1枚目『Lady In Satin』'58で、ビリーの声の調子がもっとも壊滅的なアルバムなのを思うと、歌手としての力量や調子の如何を超えて、創造性の豊かなアーティストだったビリーの才能のスケールとポテンシャルの高さを感じさせられます。
 ビリーのスタンダード曲レパートリーはチャーリー・パーカー(1920-1955)、マイルス・デイヴィス(1926-1991)を始めビ・バップ以降のジャズマンの必須レパートリーになっていましたが、ビリー歿後に真っ先にビリーが『Lady In Satin』で採り上げた隠れた名曲「不幸せでもいいの (Glad To Be Unhappy)」をソロ・デビュー作『惑星 (Outward Bound)』'60('60年4月録音)、やはりビリーのスタンダード・レパートリー「Tenderly」の無伴奏アルトサックス演奏と、アメリカ本国ではまったく話題にならなかったビリー晩年の専属ピアニスト、マル・ウォルドロン(1925-2002)とビリーの共作オリジナル曲でビリーの生前にインストルメンタル版がウォルドロンのアルバム『Left Alone』'59(同年2月録音)に収録されるもビリーの急逝により歌唱版の録音がかなわなかった遺作曲「Left Alone」を第3作『ファー・クライ (Far Cry)』'62(録音'60年12月)でカヴァーしたのはマルチ木管楽器奏者のエリック・ドルフィー(1928-1964)で、ドルフィーは'61年7月のブッカー・リトル(1938-1961)とのWリーダー・クインテットとの2週間のクラブ出演でバス・クラリネットの完全ソロ演奏で「God Bless The Child」を演奏し、同曲は以後ドルフィーのライヴ定番曲になりますから、ビリー歿後にもっとも早くビリーのレパートリーの連続録音を行ったジャズマンに上げられます。バス・クラリネットの完全ソロ演奏「God Bless The Child」は5通りのライヴ録音が残っており、後になるほどより自由奔放な演奏になっています。
 名演の筆頭に上げたソニー・ロリンズ(1930-)版は3年のブランクからのカムバック作になったアルバムからで、ピアノを入れないギター、ベース、ドラムスだけをバックに、曲のBメロ部はギターに任せ、アドリブを一切排してストレートなテーマ演奏だけで勝負したものです。また、ドルフィーの推薦でデビューしたヴィブラフォン奏者ウォルト・ディッカーソン(1928-2008)はピアノに鬼才アンドリュー・ヒル、ドラムスに名手アンドリュー・シリルを迎えた名盤『To My Queen』'62のクロージング曲にベースの名手ジョージ・タッカーとのデュオ演奏で同曲をカヴァーし、ストレート・アヘッドなジャズ・ギタリストのグラント・グリーン(1935-1979)の快作『Sunday Morning』'62にもドルフィーと同時期のカヴァーがあります。'61年、'62年に他にもアビー・リンカーン(ドルフィー、ウォルドロン、リトル参加)、アニタ・オデイ、カーメン・マクレイ、アレサ・フランクリン、エディ・ハリス、ルー・ロウルズとカヴァーが集中しており、いずれも追悼の意をこめたものなのは言うまでもないでしょう。

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Eric Dolphy - God Bless The Child (from the album "Here And There", Prestige Records PRLP 7382, May 1966) : https://youtu.be/sCvfgs7cYkQ - 5:16
Recorded live at The Five Spot Cafe, July 16, 1961
[ Eric Dolphy & Booker Little Quintet ]
Eric Dolphy (unaccompanied solo bass clarinet)

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Eric Dolphy - God Bless The Child (from the album "The Illinois Concert", Blue Note 99826, 1999) : https://youtu.be/xQZ1c3ixoa4 - 8:45
Recorded Live at the University of Illinois, Champaign, IL , March 10, 1963
[ Personnel ]
Eric Dolphy (unaccompanied solo bass clarinet)

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Walt Dickerson - God Bless The Child (from the album "To My Queen", Prestige Records New Jazz 8283, 1962) : https://youtu.be/7S8Rft47Bcc - 3:53
Recorded at The Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey, September 21, 1962
[ Personnel ]
Walt Dickerson (vibraphone), George Tucker (bass)

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Grant Green - God Bless The Child (from the album "Sunday Morning", Blue Note BLP 4099, 1962) : https://youtu.be/HeQfRWU94SI - 7:21
Recorded at The Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, June 4, 1961
[ Personnel ]
Grant Green (guitar), Kenny Drew (piano), Ben Tucker (bass), Ben Dixon (drums)