Recorded at Klaus Schulze Studio, Hambuhren, 1981
Released by Innovative Communication KS 80014, October 1, 1981
Produced and Composed by Klaus Schulze
(Side 1)
A1. A Few Minutes After Trancefer - 18:20
(Side 2)
B1. Silent Running - 18:57
[ Personnel ]
Klaus Schulze - electronics
Wolfgang Tiepold - cello
Michael Shrieve - percussion
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(Original Innovative Communication "Trancefer" LP Liner Cover & Side 1 Label)
秀作というのも微妙なニュアンスで、名作や傑作、佳作というのとも違う職人芸的な面で成功しているから秀作とするのですが、創造性ということなら本作はやや乏しく、あくまで音楽性は『X』や『デューン』の延長線上にあり、ティーポルドとの共演の名演がまた1作出来たという具合で、今回はハラルド・グロスコフのドラムスに替わってマイケル・シュリーヴのパーカッションが素晴らしいポリリズムを生んでいる、という風に新しい音楽コンセプトを生んでいるとまではいきませんが、前作『ディグ・イット』ではアナログの死を宣言したらシュルツェの音楽の表現力も全体に低下してしまった失策がありました。本作ではデジタル化した制作に活を入れているのはティーポルドとシュリーヴのアナログな演奏です。それによってデジタル機材による録音でシュルツェもようやく生彩に富んだインプロヴィゼーションである時は前面に出て、ある時はティーポルドやシュリーヴの背後に回る、と自在なアンサンブルを披露しています。『ディグ・イット』は『ディグ・イット』であの寂れた味がシュルツェの狙いであり、そうした意味ではシュルツェの意図を実現したアルバムだったとしても機材の完全デジタル化を目指した結果ミュージシャン・シップの高い共演者の参加が不可欠、と気づいたのも前作の音楽的な質的低下からだったでしょう。本作はシュルツェのアルバムではもっとも収録時間の短い、AB面合わせて38分に満たない最短のアルバムになり、現行版CDではA面曲・B面曲の各別ヴァージョンを収めたリニューアル版になりましたが、オリジナル通りのシュルツェ初の全編で40分を切る簡素な収録時間なのもおつではないかと思います。シュルツェは翌'82年はミュージシャン・デビュー以来初のアルバム発表のない年になり、'83年の次作『Audentity』はLP2枚組大作で、本作のティーポルド、シュリーヴに新たにピアニストのライナー・ブロスを加えた編成を取り、以降ライナー・ブロスは密接なシュルツェの共作者になります。ヴァーンフリート・プロジェクトともども、シュルツェにはそうした共同制作者との作業が必要な時期で、本作はデジタル化以降まずゲスト参加者の起用が成功した、ソロ名義作品では最初のアルバムと言えるものでしょう。