人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

病棟スケッチ(2・乖離性障害)

今回でぼくは入院は4回目になったが、入院するとまず入れられる隔離室はこれまでで最長の3週間だった。何も持ち込めない。メガネだけだ。2週目から3時に1時間ほど病棟内に出してもらえるようになった。ナースからペンを借りて意見箱の紙をガメて隔離室で記録をつけていたが数日でバレて取り上げられた。マスターベーションでもするか、と始めたらドア上部の小窓からナースに「体力消耗しますよ」と注意された時は情けなかった。
「私は家の電話線切って家中の照明叩き割って、下着姿でふらふら裸足で外に出たところを警察に保護されて、気がついたら隔離室でした」と滝口さん(仮。女性)。「ペーパーを詰めてトイレ溢れさせて床を水浸しにしてやりましたよ(笑)」ぜんぜん懲りていない。
大体どこでもそうだと思うが、病棟でもやはり女性の適応力の方が高い。未知の相手でも物怖じしない。感情の爆発を恐れない。ただし孤立には敏感で、派閥の力関係に気を使っている。そんなことは男社会でだってよく見られるが、病棟では男は萎縮してしまうのだ。女性は逆に病棟では開放的になっている。
患者はメイクを許されていない。男性にとっては何の不満もないが、女性のうち数人は毎日のようにナースは薄化粧してるのに自分たちはなぜダメなのか食い下がっていた。
残念ながらぼくは居合わせなかったが、食堂でテーブルをひっくり返しての乱闘もあったようだ。服薬の列に後ろからケリを入れ髪の掴み合い、これは間近で見た。病気だからと言ってしまえばそれまでだが、抑制が外れてしまっているのだ。そして翌日にはもう忘れてしまっている。だから何度でも繰り返す。
こうして見てくると、それが精神疾患に由来するものなのかどんな人間にでも起こり得ることなのか境界が曖昧になってくる。
典型的なのが「乖離性障害(ヒステリー)」で、ヒステリーといっても一般的なイメージとは異なる。無意識の願望が引き起こす行動のことだ。よく例に挙げられるのは主婦や摂食障害者の万引き、不確実な自殺未遂、リストカット。自分が危機的状態にあることに気づいてほしい。自己処罰的側面もあるだろう。
ぼくは恋愛の行き詰まりからまったく現実性のない転居を試みてボヤまで出した。内山さんは半年前に辞めたパート先にパジャマで出勤してしまった。
滝口さん?たぶん確信犯だと思う。かっこいい(笑)。