人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

こんな雨の日には(入院覚え書き)

(これは4月半ばに別れた女性へのメールの抜粋でリライト。精神疾患が中心的な話題なので資料として掲載する。物書きなど恋人にしないほうがいい。いずれネタにされる)。

ありがとう、Rさん。もう退院から2週間になる。
Mさんの件で嫉妬されるのは意外だ。ぼくの見舞い状はそんなに美しいかい?

きみはお嬢さんの不眠症を気にしていたが、潜在的精神疾患ならぼくの娘たちの方が懸念が大きい。二人ともアスペルガー症候群の兆候がある上、躁鬱ともに遺伝的資質が強い。別れた妻にどう伝えるかまだ思いつかない。

ぼくの父や伝説的な祖父の行状から見ても、ぼくの家系には職人と躁鬱の特質があるようだ。職人はともかく(器用貧乏だからそれも情けないが)躁鬱はありがたくない。
ぼくはややこしい躁鬱ばかりでなく純粋な鬱もあるから(当初の診断はそれだった。ぼくが躁を起こすまで)、今日みたいな雨の日はつらい。

本当に怖いのは躁で、ほとんどコントロールを失うから(瞻妄状態で行動し、記憶も断片か欠落。現実と幻覚・妄想の区別がつかなくなると統合失調様態に進む)それに比べれば鬱はまだしもだ。どっちもつらいけどね。

今回ぼくは躁鬱の最悪の状態に陥って入院した。隔離室3週間も仕方ない。主治医の問診で、
「自分がどうだったか思い出せた?」
「はい…2週間くらい記憶に欠落がありますが、その間に軽犯罪…万引き未遂や建築物浸入やタクシーの無賃乗車を繰り返し、部屋では幻覚や妄想に襲われ、本棚やCD棚を散乱させて布団に火をつけました。ぼくは逃げたかったんです。恋愛…不倫の行き詰まりが原因でした」

うん、これだけ自分で振り返りができるんだから、あとはたっぷり休んでいって。大丈夫だよ、と主治医は言った。ぼくは心配事…統合失調の兆候はないかを訊いた。入院後の看護計画カルテで診断名に「統合失調症候群」とあったからだ(単なる誤記だった。入院患者の9割が統合失調症候群だからだ)躁鬱から統合失調に進む、または併発することはあるんですか?
「ああ、一時的な錯乱はあったけど」と主治医「佐伯さんは躁鬱だよ。間違いない」

統合失調症候群の方が双曲性感情障害(躁鬱病)より重度の精神疾患というわけではない。寛快ならむしろ前者の方が問題が少ない(躁鬱病の寛快は軽鬱状態の維持)。問題はその先。手前にも、真最中にも。