人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

三大プログレ裏番長( 王道編)

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今回の三大プログレ裏番長は、またまた強烈なジャケットが揃ってしまった。上からジェスロ・タル「パッション・プレイ」1973(米チャート1位)、ジェントル・ジャイアント「ジェントル・ジャイアント」1970、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター「ポーン・ハーツ」1971。
いったい昔の人は、レコードのAB面通して45分1曲(ジェスロ・タル)とか、ジャケットが怖くて持って歩けないとか(ジェントル・ジャイアント)、A面12分の曲が2曲・B面24分の曲が1曲(ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター)とか、そんなものをよく楽しんでいたものだ--という反省(単に「飽きた」ともいう)があり、リスナーはそれでいいがミュージシャンの方は、そんじゃ俺たちどうすりゃいいの?になる。
三大裏番長は実力もセンスもありすぎて、とにかく徹底的に凝っていながら余裕綽々でやってのけるのが人気の秘密だった。五大バンドと異なるのはそのあたりでもある。プログレというジャンルのパロディをプログレでやっている。
デビュー年を見ると、裏番長たちも五大バンドとさほど時期は変わらない。アルバム出すごと、ツアー活動の度に明らかになったのは、かれらには五大バンドのようなポップな要素が少なく、可愛いバラードもグレゴリオ聖歌みたいにしないと気がすまない、という意固地なセンスだった。五大バンド中いちばんの技巧派と目されていたイエスを「俺たちの方が巧い」と一蹴したのもジェントル・ジャイアントである。
ホームレスの格好でデビューし、割とまともなプルース・ロックを基本にしているにもかかわらず、リーダーの広範な音楽知識が災いしてリスナーもろともヤバい世界に行ってしまったのがジェスロ・タル。本当にヤバくなる前に、アルバム何枚もかけて引き返してきた。
ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターは一言でいえば耽美系ロックの元祖。美形はリーダーでヴォーカリストピーター・ハミルだけだが、ドラム、オルガン、サックスという変則トリオの混沌とした演奏がカリスマティックなヴォーカルでキリッと焦点を結ぶ自然体の妙技はCDからでも感じられる。
同時代のイタリアやフランスのロックを聴くと、五大バンドと三大裏番長はほとんど同じ比重で重要視されていたのがわかる。世界にはまだ正義というものがあったのだ。しみじみ。