1965年に東京・和光高校の3年生、早川義夫が同級生と始めたフォーク・グループが後のロック・バンド、ジャックスの母体。翌年にはフォーク編成でラジオ出演、67年には四人編成で黄金期のメンバーが揃う。渡辺貞夫推挽でレコード契約し68年にファースト・アルバムを発表するもメンバー・チェンジで活動は停滞、翌年のセカンド・アルバムをもってバンドは解散する。
『からっぽの世界』
ぼくオシになっちゃった
何にも話すことできない
ぼく寒くなんかないよ
きみは空を飛んでるんだもの
ぼく死にたくなんかない
ちっとも濡れてないもの
静かだな 海の底
静かだな 何もない
ぼく涙かれちゃった
頭のなかがからっぽだよ
ぼく甘えてるのかな
何だか嘘をついてるみたいだ
ぼく死んじゃったのかな
誰が殺してくれたんだろうな
静かだな 海の底
静かだな 何もない
(デビュー・シングル/早川義夫作詞・作曲)
『マリアンヌ』
嵐の晩が好きさ
怒り狂う闇がおれの道案内
嵐の晩が好きさ
殴りかかってくる海の男たち
おれは湖に舟を出す
嵐は舟を目茶苦茶に叩く
真っ暗な 真っ暗な
水の中から現れる
白い両手でおれを抱きしめ
嵐を誘う
水の中からわきでた命
ずぶ濡れの髪と体を激しく寄せて
嵐は猛る 湖は怒る
稲妻が走る
おれは嵐で洗われる
目も眩む恋に
何も見えない嵐の晩に
激しく狂った男たちに囲まれて
おれはマリアンヌを抱いている
(セカンド・シングル/相沢靖子作詞・早川義夫作曲)
次の曲は女性のマスターベーションを詠った歌詞が話題を呼んだ。
『遠い海へ旅に出た私の恋人』
朝日のあたる丘の上で
私は指をそっとかざしてみるの
エメラルド色の蒸気がわいて
私の指に海が続くの
私はラヴとつぶやき
目を閉じて口づけを待つの
ひろがってゆく海の中に
あなたの瞳が笑ってみえる
私はラヴとつぶやき
目を閉じて口づけを待つの
海は甘く漂うだけで
あなたの口びる届かない
届かない
届かない
(ファースト・アルバム「ジャックスの世界」より/相沢靖子作詞・早川義夫作曲)
日本のドアーズともいうべきジャックス。未聴のかたはぜひ。