人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

D.W.グリフィス「国民の創生」

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「映画史上初の長篇劇映画」という知識はどのくらいの一般常識なのだろう?実際には解答にも諸説あって、重箱の隅をつつくような複数回答もあるのだが、内容・手法・規模・長さ・興行的成功・後世への画期的な影響力で確実にその条件を満たすのはこれだ。これしかない(長篇劇映画なら同時期のイタリアにもあったが、舞台劇をそのまま撮影したものに部分的なトリック撮影を加えたものでしかなかった)。

国民の創生 'The Birth Of A Nation'(米、ユナイテッド・アーティスツ1915)クローズアップその他の技術を発見してアメリ映画芸術の父といわれるグリフィスが1915年に完成した12巻という稀有の大作。南北戦争によって没落した南部がク・クラックス・クランの活躍によって、一部の横暴なる黒人勢力を征服する。南部的な偏見が内容にうかがわれるが、技術的な見事さは映画作家としてのグリフィスの名声をさらに確固たるものにした。ヘンリー・B・ウォルソールリリアン・ギッシュ、ロバート・ハロン主演。
(筈見恒夫「映画作品辞典」なお田中純一郎「日本映画発達史」によれば日本公開は1924年で、おそらく長さのため一連の代表作に後れて輸入されたのがわかる)

監督D.W.グリフィスは1875年生れ、ハリウッド設立以前の1907年にシナリオ・ライターとして映画界入り、翌年には監督昇進。1913年までの6年間に457本の短篇(10分)を監督している(年平均76本!)。14年には中篇(1時間)を4作といよいよ大作の構想に入り、白人優位主義の秘密結社K・K・Kを描いたベストセラー小説「クランズマン」を映画化した3時間の大作が「国民の創生」だった。DVDのパッケージより引用する。

○STORY 舞台は南北戦争とその後の連邦再建時代のアメリカ。北部のストーンマン家と南部のキャメロン家、両家にもたらされる息子の戦死、子供たちの恋愛、そして娘の投身自殺などの出来事を黒人奴隷解放リンカーン大統領暗殺と併せて語られる大作。
人種差別的な白人の視点による歴史ドキュメンタリー・タッチの作品だ。'フラッシュバック'や'モンタージュ効果'などその後の映画に影響を与えた技法が多く用いられている。

ちなみに図版は解放奴隷をリンチするシーン。2015年、「国民の創生」100周年は祝われるだろうか?