人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(12)不遇バンドの埋もれた名作

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これは自信を持って薦められる。複雑・難解さも適度に刺激的で、丹精こめた丁寧な音づくりが巧みな演奏と控え目な歌唱で美しい世界へと誘う。ロカンダは2作、バロッキとアルーザはこの1作しか残さずオイル・ショックと共に消えた。メンバーのその後も含めてインフォメーション一切なし。
しかしこの3組はありそうでないイタリアならではのプログレッシヴ・ロックのスタイルに属していた。これは一流バンドにはない特色で、ハード・ロック的アンサンブルとビートは用いず殺気には欠けるがスリリングな展開がある。それがこれらのバンドを忘れ難い存在にさせている。

PFMやバンコが英米ロックにひけをとらない一流バンドなら、ロカンダらはクラシックや民衆音楽に立脚して英米ロックにはないスタイルから独自のロックをやっていた。アルバムの出来のみならずメンバーの力量からもプロで通用するのはもちろん(レ・オルメは?…)しっかりしたバックグラウンドを感じる。幼い頃から正規の音楽教育を受けてきたメンバーたちなのだろう。譜面も即興も楽勝。土台からして日本のアマチュアとは違うのだ。

それほどの名作を軽々と作ったバンドが1~2枚しか出せずに解散し、メンバーも(おそらく)ミュージシャンを引退した。厳粛なものを感じる。
紹介アルバムはクェラ・ベッキア・ロカンダ「歓喜の時」1974(画像1、このバンドはファーストも名作)、イル・パエーゼ・デイ・バロッキ「子供達の国」1972(画像2)、アルーザ・ファラックス「私の奇妙な教育法について」1974(画像3)。どれも日本盤が出ている。廃盤のものは高い。
ここで前回書き落としたことを書いておこう。トリアーデ(金色のやつ)のジャケットに帯がついていて(「紙ジャケ」なんです)「イタリアン・プログレッシヴ・ロック」とだけ印刷してあるでしょう?これはbft.itでマイナー・レーベルだが、大手BMGからも紙ジャケで統一オビでRock Progressiveという70年代のイタリアン・ロックの復刻シリーズが出ている。ユニヴァーサルからはフィリップス、ポリドール、マーキュリーの各レーベルから全48枚(+レ・オルメ全集11枚組)といった具合で、ターゲットは日本のユーロ・ロック愛好家。70年代当時不遇だったイタリアン・ロックは、現在輸出品として重宝されているのだ。