人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ブルーベック、その他のエッセイ

○コメントと断片より

(1)ブルーベック亡くなりましたか。日本人が何と言おうとブルーベック=デズモンドは本国ではジャズ・ピアノ、ジャズ・アルトNo.1なのだ、と岩浪洋三氏の文章で読みました。実際ジャーナリズムでもリスナーでもそれだけの認知度があるようです。黒人ジャズは業界的にはインディーズ規模で、ブルーベックの方が主流。そう思って聴くと、消費者サイドは白人なんだな、と痛感します。

(2)乾直恵はまったく忘れられた詩人で、詩集は再版も選集もなく入手不可能ですが、伝記と作品論を兼ねてほとんどの作品を引用紹介している実質的な全集「詩人 乾 直恵-詩と青春-」(上田周二・潮流社1982)なら古書で見つかるかと思います。今後この詩人が再版されたり研究書が出る可能性はないでしょう。
もうひとり、抜群の才能を惜しまれて夭逝した左川ちか(1911-1936)。没後に「左川ちか詩集」1936を残し長らく絶版でしたが1983年に1巻本全集「左川ちか全詩集」(森開社)が刊行され、昨年復刊されました。望遠鏡を逆に覗けば現代の詩の方が年老いていて、かれらの方が若いのです。

(3)今まで取り上げてきた詩人たちとは、乾直惠はかなり毛色が変って見えるかもしれません。それはこの詩人の美意識が端正な表現を取っているためで、作品の芯にあるのは確固とした実存主義的自己認識です。一見甘い作風の裏を見抜いてください。

(4)かなりの数の詩人を紹介してきましたが、乾直惠は機を逸していました。それは詩集「肋骨と蝶」が山村暮鳥詩集「聖三稜玻璃」や伊東静雄詩集「わがひとに与うる哀歌」のように全編でひとつの作品を構成しており、抄出では真価が伝わらず、早い話難解だからです。いつかちゃんと読みたいな、と思っていたので(それには転写がいちばん)、全編の紹介に踏み切ることにしました。詩集一冊まるごとです。今年はこれで締めます。

(5)かなり以前「今は電子辞書で済みますね」「そうでもないですよ」というやりとりしましたね。漢和辞典だけは電子化しても限界あります。まず読みや部首を知らないと。ちなみに葩(は)は花びらの意味、蕋(ずい)は蕊の俗字で花のおしべ・めしべです。鮑、鶸なんかも日常的な漢字じゃないですよね。これでぼくも官能と尿酸だけではないとお分かりいただけたでしょうか(笑)?