人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補5b)ハービー・ニコルス(p)

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Herbie Nicols(1919-1963,piano)。
ニコルスの代表作、
The Herbie Nichols Trio(画像1)55.8.1&7/56.4.19
-は3回のセッション18曲29テイクからオリジナル9曲、スタンダード1曲('Mine')を収めたもの。ベースは前作に続いてアル・マッキボンだが、今回のドラムスはマックス・ローチに代わった。テーマを構成するフレーズがコードと複雑にもつれあい、ドラムスへの依存度が高いニコルスの音楽にはブレイキーよりローチこそ適任だったようで、このアルバムでニコルスはモンクに肉薄する音楽に到達した。スリリングな'The Gig',皮肉の効いた'House Party Starting',ビリー・ホリディが歌詞を書き愛唱歌にした'Lady Sings The Blues'など鮮やかな佳曲揃いで、80年代以降やっと評価が高まりニコルス曲集も10枚以上出ているが、衆目の一致する名作はこれになる。

The Herbie Nicols Trio Vol.2(画像2)55.8.1&7/56.4.19
-は96年「ハービー・ニコルス・トリオ」セッションの残り曲・別テイクを集めた日本盤で、出来は正編と遜色なく、本来ブルーノート社はアルバム2枚分を予定してセッションを組んだとも考えられる。そうならなかったのは売り上げが反映したのだろう。モンクですらやっと認知され始めた時期に、さらに前衛的で無名の新人が売れるわけはなかった。

ニコルスの最後のアルバムになった、
Love,Gloom,Cash,Love(画像3)57.11
-はブルーノート社からベツレヘム社に移って録音された。全10曲中7曲がオリジナルで、3曲のカヴァーも知られない曲ばかりやっている。ブルーノートのアルバムの印象があまりに強いので割りをくっているがこれも個性が強くいいアルバムで、オリジナル曲の水準もブルーノート盤に劣らず、没年まで5年以上も録音の機会に恵まれなかったのが惜しまれる。

ニコルスは晩年まで酒場でニューオリンズ・ジャズの仕事を続け、一部の若手と親交を深めて未発表曲やトリオ曲のホーン入りアレンジを伝授した。没後20年以後の本格的評価はニコルスの愛弟子たちが中心になった。それでもやはり一般的人気とは離れているピアニストには違いない。