人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出32

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・3月19日(金)晴れ(注1)
(前回から続く)
「夕食前に入浴。毎日Kくんが佐伯くんが入るならおれも、とついてきて一番風呂を浴びるのも習慣になっている(注2)。『不道徳教育』読み始める。予想以上に歯応えのある批判的資本主義社会学の分析で、富の再分配に対抗するリベラル派→国家権力の市場介入を批判する古典的リベラリズム→さらにリバタリアンに分岐、という辺りから検討し、リベラリズム(進歩的自由主義)とリバタリアニズム(自由原理主義)の区分になる。するとユマニズムとルソーの関係は古典的リベラリズムリバタリアンに置き換えられるのかどうか、アングロサクソン文化とラテン文化では必ずしも対応しないのか。さらに合理主義経済学的観点からの国家廃絶主義(!)という発想までで第一章。かなり手強い。Udさん(注3)はもうとっくに読んでるかもしれないな。経済学で美術論書いちゃう人だから」

「入院中の読書に『ロビンソン・クルーソー』を薦めてくれたのはUdさんだが、あれが近代資本主義のテキストとして経済学・社会学に由来する(生産→消費システムの確立)現代思想で再評価された、とは今回再読してありありと実感できた。マックス・ウェーバーは参考文献に上げていたっけ(注4)?ベンヤミン(注5)あたりではまだ『ロビンソン』は盲点になっていたと思う。近代資本主義の根本にプロティスタンティズムのイデーがあるのも『ロビンソン』を読むとよくわかる(注6)」
(次回へ続く)(注7)

(注1)この日だけで三回目だが、日に日に手記自体が長くなっているので申し訳ない。入院中よくこんなに書けましたね、と訪問看護のアベさんにも(毎日長文ブログ二本更新もだが)感心されたほどで、自分でも呆れる。
(注2)退院の時に、みんなで佐伯さんとKさんはホモだ、と冗談のネタにしていたと教えられる。Kくんの方が女役だそうだ。
(注3)当時友人だった抽象派の青年画家。後に躁鬱の悪化時失礼なメールを送ってしまい、絶交された。
(注4)岩波文庫「プロティスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
(注5)ヴァルター・ベンヤミンちくま文庫ベンヤミン・コレクション」
(注6)入院中にSmくんとTkさんに貸したが、二人ともこんなにキリスト教臭い話とは意外だった、という感想だった。
(注7)すいません。