人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出48

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新年も三日。入院日記の続きを再開したい。

・3月21日(日)晴れ
〈祝・春分の日
(45から続く)
統合失調症の陽性症状では多弁や話題の反復、唐突な言動の変化があるのは、これまでOさん(注1)で見たし、陰性症状が鬱に近いのはKbくん(注2)やOさんで見てきた。HAは25歳と若いから陽性症状が強く現れて持続しているのだろう。妄想とは事実でないことを信じこむ、幻覚とは実際に起こっていないことを体験すると、ロビーに置いてある各種精神疾患統合失調症・陽性の解説チラシで読んだが(注3)、よりによってなんでまた佐伯がちょっかいかけてくる呼ばわりされるのか。病気だと思えば寛大になるしかないが、そこに悪意まで入っているとなると不快に感じずにはいられない。今後は極力無視するしかないだろう。あの女は八方美人だから嫌いだ、というKくんに、ああいう方がコミュニケーション能力は高いんだよ、と返答した記憶があるが、彼の方が正確に見抜いていたことになる。―いつの間にかHAは待ち合わせ場所のA屋前ベンチまで追い抜いて行ってしまって、みんなが着くと私先に行くね、と病院に先に帰ってしまった」

「病棟に戻ると昼食まであと10分。外泊(一時帰宅)が多いので15人しかいない。メニューはけんちんうどんと煮しめ豆腐。どんな味だい、とKくん。ポン酢しょうゆかな。彼はピーマンや人参、酢の物、その他やたらと偏食が多いので、食べられないものはもらってあげている。食事には、残量チェックがあるからだ。今日は春分の日のカードが添えてあって、ぼたもちがついていた。甘いものが苦手(それでも病院で出されたからには食べる)だが、たまには、あくまでたまにはだが、甘いものもいいな、と思った。日曜は掃除もラジオ体操もない。ここまで日記を書いて午後三時をまわったところだ」

(注1)まだ筆者が双極1型の躁鬱病と判明する前に通所していたデイケアで友人になった初老(当時68歳)の男性。通院歴30年(当時)。
(注2)筆者の初入院の時友人になったバツイチ男性、筆者より6歳年下。
(注3)Kくんの「(HAは)陽性なんだよな」という発言はこのチラシに拠る。女性患者どうしの会話で彼女が、「私って美人だから」と口にするのを小耳に挟んで、Kくんは確信を深めた。