人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記85

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・3月26日(金)曇り、にわか雨、にわか晴れ、曇り
(前回から続く)
「バスガイドを頼んだわけではないのにしゃべるしゃべる、とにかく見えたものを片っ端から寸評しないと気が済まないらしい。無駄に知識をひけらかす人は本質的には馬鹿、というのは健全な常識だと思うが、だとしたらSkさん自身が馬鹿か、こちらを舐めて無意味な長口舌をふるっているかのどちらかだろう。だがその手の人はそこを突かれるとにわかに攻撃に転じるのも経験上痛いほど知っている。この程度ならふんふんと聞き流すに限る。だがそれにしても…」

「ここはショッピングセンター密集地区だの、あの変な文化会館はゴシック様式だの、ここら辺の公共施設はモダンだの、結婚式の記念写真を撮影中の教会を目撃すればあれはプロテスタント教会だな、マリア像がないだの、さらにいくつもの企業ビル、住宅造成地を通り過ぎるたびにうんちくを垂れ、とにかく興味がやたら広い。たぶんSkさんでもKくんやMさん、Smくん相手にはこんなにべらべら話さないだろうし、FさんやTもおそらくSkさんには別の意味で苦手だろう。退屈しのぎの独演会にちょうどいい相手と見倣されているわけだ。跳んで火に入る鍋のカモ、といったところか」

「病院に戻ってからはすぐ3時~4時までは女性AAで、これは男子禁制なので煙草は喫いに行けない。それよりKs先生の診察と重なったアルコール科女性は慌ただしかっただろう。女性AAのミーティング時間の関係上今日は男性の入浴時間の方が先になる。少し経ってからの方が空いているかな、と30分遅れで行くと、ちょうど3人同時に上がったところだった。泳いだり潜ったり排水溝に放尿したりと一人風呂を満喫する(上がり際にAtさんが、ああ佐伯さーん、と入れ違いになったが。Atさんは顔を会わせるといつも嬉しそうで、なぜ好かれているのかわからない)」

「夕食前に朝から持ち歩いていた庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』を読了。映画がつまらなかったので読まずにいて損した、というより見直せば映画も面白いに違いない。夕食では例によってKくんの食べない副菜を引き受け、ちらし寿司の上のほうれん草も(彼は食べられる野菜の方が少ないのではないか?)同様。いつもUzさんは不思議だったらしく、残量チェックがあって残してると注意されるんですよ、と説明する」
(続く)