人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記149

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・4月5日(月)雨
「36.1c、脈64、58.8kg(朝食前)。単極性鬱の人ならともかく双極性障害だと鬱の判定も難しくなる。躁鬱混交という状態も病期のなかではあり得るからだ。確率的には寛解期52%に次いで鬱期32%が長く、躁・軽躁期10%、躁鬱混交期6%と続くのが双極=1型だから今まではなんとか寛解期でいられたとして鬱期に入ってもおかしくはない。躁と鬱は逆のようでいて抑制された状態、たとえば今まさに該当するのだが、押さえこまれた環境では現れ方は似ている。いらいらする、落ちつかない、これは個人的な症状かもしれないが周囲の人たちに対して違和感と敵意がつのる」

「鬱なのだろう、ただしそれほど重くない。重鬱はこんなものではない。軽い鬱傾向と思おう、躁鬱では危険度が高いのは、抑制が利かなくなる躁の方だとどの本にも書いてあるし、自分でも経験してきたことだった。躁ならとっくに無差別攻撃に入っているはずだ。ということで鬱と決める。だから朝はとてもつらい。起床のアナウンスでは目が醒めなかったが、Atさんの電気シェーヴァーの音で覚醒し、だったら今から起きれば朝の仕度と喫煙にちょうどいいな、と思いながら五分ほど横になっていた」

「目が醒めるまで、新しい恋人ができた夢を見ていたのを思い出した。本当に些細な幸せ、隣あって座りながら他愛のない会話を楽しんだり、一緒に歩いたり、ただ単に二人でいるだけで楽しくて幸福な女性…これまでのHm,Ak,Ykがそうだったように。そのまま夢の続きを見ていたかった。自宅だったならこのまま昼過ぎまで横になっていたかもしれない。二度寝できなくても余韻に浸っていたくて。まだ女性との幸福に幻想を持っている自分の甘さにも幻滅する。あともう少しで妻子と別れて満三年になるじゃないか」

「朝食の席でもあいさつ以外始終無言。別に話すことなどないからだ。隣のテーブルから早食いのSmくんがわざわざ通りかかり、佐伯さんエイプリル・フールの後無口になっちゃったけどおれ、いじりすぎた?あんなのもうどうでもいいよ。怒ってる?そう見えるならそうなんだろう。食後の喫煙室でもKくんにどうしたんだ一体、昨日のおっさんの件といい今朝の様子といい君らしくないぞ。さあ、これもおれだよ。鬱なのか?どうかな、機嫌が悪いのは確かだが…飽きてる、ってところかな」(続く)