人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記171

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(人名はすべて仮名です)
・4月9日(金)晴れ
(前回から続く)
「その時は勝浦くんが滝口さんをなにかとさすが二児の母だ、と言うのや金田さんが勝浦くんをぼくちゃんと呼ぶ、そうした馴れ合いの雰囲気そのものに対する嫌悪感が一気に昂じたのもあるだろう。テーブルのみんなが一斉に静まった。金田さんが、ねえ、いつもの佐伯さんに戻ってよ、とおずおずと場をとりなしに口を開いた。いつもと変わりはありません、どうかしているのはみなさんです。もういいのよ、誰だって不機嫌な時はあるわよ。なんとなくうなずく梅崎さんと滝口さん。だから勝浦くんにまたその朝の件を持ち出されても返答しなかった。あんなことを蒸し返されても言うことはなにもない」

「夕食後は部屋に戻って一人で静かに過ごしたかったが、服薬して四方山話につきあっているうちに辞去するタイミングを逃し、羽田有紗が一児の母親という寝耳に水の話を聞いた。女性患者は誰かしら同室になるから横の繋がりで知っている。男性患者にはそんな話は一切しない。羽田はお父さんと二人暮しで、入院中は離婚したお母さんに預けているらしい。彼女は自称25歳だから小学二年生の子供ということは17歳頃の出産、滝口さんは写真も見せられたという。カリフォルニア州立大学医学部を17歳で飛び級卒業した話は?10歳から入退院を繰り返していて、しかも生保で留学などあり得るか?どこまでが本当か、本人にとってはどうなのか。彼女の話がすべて真実で、なおかつ現在のような言動を呈しているなら、仮に社会生活が営めるとしても症状としては慢性化に踏み込んでいるとしか思えない」

「だれも羽田有紗のことは真実を知り得ないから、現実感のある話題に自然に流れたのだろう、と思う。要するにどんどん他愛のない話に飛び、セーラームーンセーラー戦士を全員言えるか、これは梅崎さんはお嬢さんが現役世代、金田さんがお孫さんが、勝浦くんは奥さんの連れ子、滝口さんとうちは二児がそれぞれ再放送世代なのでまず基本の五人とタキシード仮面、セーラーちびムーンまではすぐに出てくるが、外部太陽系戦士の四人がええと、土天海冥だったよな、英語でなんだったっけ?姿は思い浮かぶけど…。セーラースターズの三人となるとさらにお手上げになるが、それでも羽田有紗の雲をつかむような経歴を探るより、まだいい」(続く)