人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(27)

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(喧騒)
んにゃむにゃくにゃへにゃほにゃふにゃはにゃわにゃぺちゃくちゃわちゃはちゃぐちゃべちゃがちゃばちゃわらわらわら…
・シャラップ!
ミムラ姉さんがテーブルを一打しました。全員いちどにしゃべるんじゃないの!うちは35人もいるんだから、あんたたちだって自分がなにを言っているかわからないでしょ?
だってミムラ姉さん…
そこ!発言する時はちゃんと番号を名乗る!
弟14号です、名前は…
名前を聞いても意味ないから番号だけでよろしい!で弟14号、発言は却下。
なんでです、まだ何も言ってませんよ!
真っ先に発言しようとしたから却下!だいたい35人もいると最初の意見に付和雷同するのがいちばん簡単だからね。だから最初の意見は潰しておくってこと!
そんなのって!
(付和雷同)
ほにゃふにゃはにゃわにゃぺちゃくちゃ…
・ぐぎゃん!
と弟14号の頭部がテーブル板にめり込みました。まるで超常現象のようですが、実際はミムラ姉さんが素早く不肖の弟の背後に回って張り倒し、素早く自分の席へと戻っただけです。ミムラ自身は格別並外れた身体能力を持っていませんが、35人兄妹の総領ともなると相対的には他を制圧する能力もあるもので、ときおり発動させるこの力にミムラ族の兄弟姉妹は震え上がりました。つまり彼らにとってミムラ姉さんは、
サイコキネシス
所有者であり、
サイコメトラー
と、
・テレポーター
の能力も兼ね備えているかのように見えるのです。しかし欺かれる観客なしには魔術は魔術でないように、彼女の能力もいわばミムラ空間あってこそで、その空間とは総勢35人のミムラ族の兄弟姉妹たちでした。それに気づいているのは、ミムラ本人以外には、ミムラ族中もっとも矮小な体躯から単にミーと蔑称されている、ひがみっぽくキーキーうるさい妹だけで、兄妹たちの中でも例外的存在ゆえにミーだけはミムラ空間にありながらも姉の幻術にはかからなかったのです。兄妹たちがわらわらぺちゃくちゃやっていても、ミーの金切り声は決して喧騒に調和しないのでした。
家庭では孤立しているために社会では外向的という性格はよくあるものです。ミーもそうでした。
あたし、他のテーブルに行こうかな、とミー。
ミー、とミムラはうろたえました。あなたも私たちの兄妹なのよ。このひと言がミーを増長させました。