人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(57)

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食事に戻る前に、とジャコウネズミ博士、切り抜いたテーブルを戻さなければいかんな。杖を抜くから少し持ち上げてくれんかね?
よしきた、とヘムル署長が手を添えました。ひとりで持たん方がいいぞ。ん、なぜだね?結構重いからさ。なあにこの程度大丈夫さ。なら杖を抜くぞ。
うわあ、とヘムル署長は落ちたテーブル板もろとも床に叩きつけられました。ほら言わんことじゃない、指が挟まれなかっただけでも幸とすべきじゃろ。
博士はさっきどうやってこれを持ったのですかな、と署長はスティンキーと二人がかりでようやく持ち上げながら、訊きました。たしか片手で持ってなさったでしょう、片手はノコギリを持っていたんだから。
ああそれは、まだこれから―と型のテーブルを指して、切り抜いたばかりで活きが良かったからさ。今は硬直して重くなった。赤ん坊が眠ると重くなるのと同じだな。さて、それを元の箇所にはめ込まないといかん。
そう簡単にはいかんでしょう、と署長。切り抜いた時に結構おがくずが出ているから、その分スカスカになるはずだ。はめても落ちてしまいますよ。ここはウェイターに言ってテーブルを替えてもらうか…。
そんなことをしたらわれわれがいかさまトランプをしていたとバラすようなもんじゃないかね?
釘ならありますぜ、とおずおずとスティンキーは釘を取り出し、これで裏から何かブリッジを当てて留めればどうですか?
今さらブリッジなどババ抜きで十分堪能したよ、とヘムレンさん。それよりなんで釘なんぞ持っているのかね、と署長。
最近始めたんです、訪問販売ってやつですが。ゴム紐は全然でしたけど、主婦は家にどれだけ釘の予備があるか知らないんで結構売れるんですよ。署長のお宅はどうですか?
そういえば予備の釘など考えたことがないな。よし、10本買う!
いや、今はテーブルを直すんでしょう?お使いになりますか博士?
いらんよ、と博士はにやりと笑って、まあそのままはめ込んでくれたまえ。
ゆるいですよ博士。
では四辺が逆になるようにはめ直してくれないか。
はまった!ぴったりです、隙間もありません。
実際は裏は削れてるがね、四辺の位置をずらせばきつくはまるように切り抜いておいたのだ。
実用的な技術にも詳しいんだな、とヘムレンさん。
いやなに、いわゆる日曜大工というやつさ。もっとも日曜の意味は知らんが。
(続く)