人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(68)

イメージ 1

フローレンはすぐにこの店のトイレは廊下に出ると見当をつけたので、適当に無難なカクテルを頼み、飲み干したらスノークにちょっちトイレ、と席を立つつもりでした。兄はうむフローレン、だがそのちょっちはやめろ、と言うでしょう。ですが彼女の誤算は適当なカクテルにするべきではなかった、考えるべきだったということでした。
一回戦。私はロックでいいか、フローレンは?カルーアミルクをお願いするわ。スノークの前には岩、フローレンの前には牛乳瓶が恭しく置かれました。お前のは一応飲み物だな、私のは料理ですらないぞ。
二回戦。スノークジンライム、フローレン=モスコミュール。スノークには割り箸の手足つきライム…送り盆か、それともバルカン300!か?人ライムってことでしょ、とカクテルを飲むフローレン。これは、と彼女は愕然としましたがおいしそうに飲み、お兄さまお気の毒に、生のライムをかじっても味気ないのではなくて?上等だ!ですがフローレンのカクテルもカクテルではなく、たぶんただの黒酢でした。
三回戦。スノーク=ホットドッグ、フローレン=ダイキリ。お兄さまヤケになっていません?お前もだ!あら、私のは少なくともこれまでずっと飲み物よ。やがてスノークにはホットドッグとマスタードとケチャップが、フローレンには大根の輪切りが運ばれてきました。彼女はウェイターに、これを串が刺さる程度に海水で煮込んで十分大根が煮えたら大根は捨て、海水の方を容器の外から氷で冷やしてムーミンママに差し上げてちょうだい、と指示しました。これは未来の姑へのフィアンセからの宣戦布告です。
四回戦。ペリエだ、とスノーク。お兄さま自信おありのご様子ね。お前のいんちきお上品語の方がよっぽど自信おありだ。ウェイターが来ました。フローレンはギムレットを頼みました。食前酒はここまでね、そのかわりちょっち強めにしたわ。フローレン、とスノーク、そのちょっちはどうにかならんか。
ウェイターが来ました。もう期待せんぞ、とスノークは素早く皿の蓋を取り、これをどうしろというのだ、しかも生きているではないか、自分で絞めろというのか?お持ち帰りなさいますか?いい、下げてくれ。
ペリカン「かぁ」
そしてフローレン・F・スノークは麦粒入りオムレツを無言で食べ終え、トイレに立ちました。これからフローレン・スノークNと交替するのです。