しんちゃんは花を摘んでいるフローレンに向かって進んでいきましたが、道端の花畑にまでたどり着くと3本ばかり花を摘んでまた引き返し、けらいのお姉さんたちに1輪ずつを捧げると再びハイレグお姉さんに肩車され、左右の手をバスガイド嬢とエレベーターガールに取らせて丘の一本道を進み始めました。フローレンは黙々と花を摘んでいます。
これはどういうことですかね、とスノーク。私の知るあの幼児は極めて見境いなく好色な幼稚園児であるはずなんですがね。まあ人間の美意識ではムーミン谷の美の基準など測れはしないでしょうが、一応わが妹はムーミン谷の誇るヒロインですよ。何らかの表敬行為があってしかるべきではないですか。
表敬行為とは何かね、おねいさん担々麺は汁あり派・汁なし派?みたいなナンパ質問かね?とヘムレンさん。つまり私の知るあの幼児は普段そういう風に共通の話題から入ってナンパを試みる性癖があるらしいが、フローレンにはなぜ同様の行為を行わんのか、それは彼女を口説くほどの美少女と認めていないからではないか、ときみは憤慨しているのかね?
いや私は単純に、とスノーク、なんであんなにあっさり無視したんだろう、と思っただけですよ。つい目と鼻の先まで近づいておきながら、あれはないんじゃないかな。
それは単純に、とヘムレンさん、あの変態幼児にはフローレンが見えておらんのじゃないかね?つまりさ、われわれの知覚には知っているものは見えるが、知らないものは見えん、という妙なフィルター機能がある。これは知的生命体のみならず野生動物ですら言えることで、もっとも野生動物の場合は本能によるのだが、生きていく上で必要な情報のみを認識し不要な情報は目に入らないわけだよ。
だったらそれは変じゃないですか、とスノーク。かたやチャーリー・ブラウン、かたや幼稚園児の一行は今も接近しつつあるし……それに考えてみれば、あの幼児はむしろ野生動物の一種でしょうが、われわれは知的生命体ではなくトロールですよ!
そういうことだろうね、とヘムレンさん。そしてまたフローレンもトロールであり、われわれは一般的には他者からの知覚の中にでも外にでも出入りできるのだろう。だが今われわれは観察者の立場なのだ。
キミはどう思う?とチャーリー・ブラウンは小鳥に訊きました。ウッドストックは、
・、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、!
と鳴きました。